親も子どもも、会話一つで気持ちが変わる
月曜日, 4月 22nd, 2013
前回は、子どもが親の期待に反した行動をとったときの対応について書きました。親は、自分の子どものことになると寛容の気持ちがもてず、ついつい尋問口調になったり咎めたりしがちです。しかし、それでは子どもの素直な反省を引き出すことができない、といったようなことを書きました。
重要なのは、子どもをコントロールすることではなく、子どもの気持ちを理解してやることです。親が自分のことを理解してくれたと思うと、子どもは素直になれます。そして、辛い現実に対して向き合う強さを取り戻すことができます。
とは言え、現実にはなかなかうまくいかないものです。そんなかたは、次のディスカッション(アメリカの心理療法家の著作を引用しました)を読んでみてください。
リーダー:何もかもがうまくいかない朝を想像してみて。電話は鳴っているし、幼い子どもは泣いているし、トーストは知らないうちに焦げちゃうし、さんざんな朝よ。そのトーストを見た夫はこう言うの。「なんてことだ!おまえは、一体いつになったらトーストをまともに焼けるようになるんだ!」 さあ、どんなふうに答える?
A:トーストを夫めがけて投げつけるわ。
B:私なら「トーストくらい自分で焼いてよ!」って言うわ。
C:私はかなり傷ついて、泣いてしまうかも。
リーダー:夫の言葉を聞いて、彼に対してどう感じる?
親たち:(声を合わせ)怒り、憎しみ、恨み。
リーダー:その場合、もう一枚トーストを焼くのは簡単なことかしら?
A:毒を塗ってもいいならね!
リーダー:じゃ、同じ状況だったとするわよ。トーストが焦げてるの。でも、夫がその状況を見て、こんなふうに言ったらどう?「うーん、おまえ、今日は大変だな。子どもは泣き止まないし、電話は鳴るし、トーストは焦げるし」
B:それならすばらしい気分になるわ!
C:いい気分になって、夫をますます好きになるでしょうね。
リーダー:どうして? 子どもはまだ泣いているし、トーストは焦げているのよ?
親たち:(声を合わせて)それでも構わない。
リーダー:何が違うの?
A:責められていないことがありがたいのよ。
リーダー:じゃあ、三番目のシナリオを言うわよ。夫が焦げたトーストを見て、穏やかな口調でこう言うの。「おれがちゃんとしたトーストの焼き方を見せてやるよ」
B:とんでもない。最初のよりも悪いわ。自分がバカみたいに感じるもの。
リーダー:今話した三つのアプローチが、子どもの扱い方にどうあてはまるか考えてみましょう。
A:言わんとしていることはわかるわ。私はいつも子どもにこう言うの。「もうそんなことわかる年でしょう」すると、子どもは必ず怒りだすの。
B:私はいつも娘に「やり方を教えてあげるわ」って言ってる。
C:私は自分が責められることに慣れているから、自然に責める言葉が浮かんでくるの。子どものころ母親に言われた通りのことを子どもに言っているわ。そのことで母を憎んだというのにね。私はいろいろなことがちゃんとできなくて、いつも母にやり直しをさせられていたの。
リーダー:そして、今、あなたの娘さんに同じことを言ってるわけね?
C:そうね。自分でもいやなのに。そういうことを言う自分も好きじゃないわ。
リーダー:焦げたトーストの話から学べることは何? みじめな気持ちを愛に満ちた気持ちに変えたのは何だと思う?
B:理解してもらっているという感覚ね。
C:責めるんじゃなくてね。
A:それに、こうすればもっとよくなるとも言われずにね。
どうでしょう。人の気持ちは、言葉一つで随分違ってきます。相手の気持ちを慮(おもんばか)って会話をすれば、場の雰囲気はガラリと変わることでしょう。
「子どもがやるべき勉強をしないから叱るのだ。それのどこが問題なのだ」と、かつて筆者は思っていました。しかし、実際に子どもにまつわる数々の問題に直面するなかで気持ちが変わりました。子どもの望ましい成長という視点の必要性を痛感したからです。
まずは、おかあさんから実行してみてはいかがでしょうか。きっと、家庭の会話が重要な意味をもつことに、家族全員がたちまち気づくことでしょう。