「家庭学習」と「宿題」の違いとは?

6月 3rd, 2013

 勉強は毎日の積み重ねです。「やったりやらなかったり」では、成果はなかなか現れてきません。こうした継続性の問題とともに、「どういう気持ちで学んでいるか」という心のありようも、成果に大きな影響を及ぼすファクターです。

 前向きな気持ちで学ぶか、イヤイヤ学ぶかによって、少しの間に相当な成果の違いが生じるものです。今回は、この「学ぶときの気持ち」の重要性にスポットを当てて書いてみようと思います。

 さて、お子さんは毎日の家庭学習を意欲的にやりこなしておられるでしょうか。親が見かねて注意をしたり叱ったりしなくても、その日に決めた勉強に率先して取り組んでおられるでしょうか。

 今、「家庭学習」という言葉を使いましたが、ここで言う家庭学習とは、「授業の予習・復習」「テキストの練習問題・発展課題などの取り組み」「副教材の学習」「テストの見直し・やり直し」などを意味します。

 これらの学習のなかには、指導担当者から「ここを家でやっておきなさい」といったように具体的に指示が出される場合もあります。しかしながら、基本的に弊社の教室に通っての受験勉強は、「何を」「いつ」「どれだけ」やるかについて、予め原則を指導したら、あとは子どもたち自身が自分で判断して取り組むような流れになっています。これは、「自学自習」を受験対策の基本においているからです。

 したがって、弊社では「宿題」という形での課題を出していません。子どもたちの家庭学習は、宿題ではなく、子どもたち自身による自主的な、自己管理に基づく学習なのです。

 しかしながら、なかにはそういうふうに受け止めておられないご家庭もあるようです。たとえば、保護者のかたから「家庭学は宿題が多いから大変」「宿題をこなすのが負担のようです」といったことを言われることがときどきあります。また、子どもたちからも、「塾の宿題が多くてしんどい」といったような言葉が聞こえてくることがあります。

 筆者は、そういう声を耳にするととても残念な気持ちになります。「宿題」「多い」「しんどい」などの言葉は、勉強に対するネガティブな姿勢や捉えかたの裏返しであり、この種の言葉が出てくる家庭のお子さんの成績がよいことはほとんどありません。つまり「なぜ受験勉強をするのか」のおおもとが揺らいでおり、「勉強を(親に・塾に)させられている」という意識が垣間見えるのです。親も一緒に「宿題がしんどい」と受け止めてしまうと、お子さんの勉強は積極的になりようがありませんし、活性化することも期待できません。

 物事は何でもそうですが、ポジティブにとらえてやれば成果もあがるし、面白くもなります。逆に、「イヤだ」「やりたくない」「辛い」などのような受け止めかたをすると、成果も上がらないし、ネガティブな姿勢が一層染みついていきます。

 人間が学んだり経験したりしたことを記憶に残すのは、大脳辺縁系(脳のなかで最も古い部分)にある「海馬」と呼ばれる部位です。専門家の本を読むと、「海馬は記憶の司令塔」「海馬は記憶の加工場」などと書かれていますが、子どもたちの受験勉強にあたっても、「学んだことが記憶に残るかどうか」は、海馬の働きによって決まります。

 ところで、子どもたちが「もっと知りたい!」「ここは、どうなっているのだろう?」などと、興味津々の態度で学ぶとき、海馬でθ(シータ)波と呼ばれる脳波が発生し、それに伴って海馬の入り口にある歯状回の神経細胞の増殖が促進されるそうです。この場所のニューロンが増えるということは、記憶の容量が増えるということで、学んで得た知識が長期記憶として残りやすくなるということです。

 海馬のθ波については以前書いたことがありますが、学ぶときの気持ちが前向きな子どもは、ただ学ぶのが苦痛でないというだけでなく、脳の機能もよくなるということなのです。

 子どもが興味をもつのは勉強ばかりではありません。むしろ勉強以外のものをやりたがることのほうが圧倒的に多いものです。そこで、大人はつい無意識に子どもに「何やってるの!」とか「いい加減にテレビを切って、勉強を始めなさい!」などと叱ってしまいますが、こういった押しつけの勉強では海馬にθ波が発生することは期待できません。

 私たちは教室で、子どもたちに考えることの楽しさや醍醐味にふれる経験を提供しようとがんばっていますが、「もっともっとがんばらなければならない」ということを痛感します。

 いつも笑顔で塾にやってきて、楽しそうに授業を受け、テストでも必ずといってよいほどよい成績をあげる子どもが一定数います。勉強のよさを知り、楽しく学べるから成果もあがるのでしょう。勉強も辛くないのでしょう。こういうお子さんが一人でも増えるようがんばることが、私たちの使命だと思います。

 ご家庭でお子さんを見守っておられる保護者におかれても、叱ったり命令したりして机に向かわせるのではなく、自発的に机について学ぶ子どもにするようがんばっていただきたいと存じます。もしもそれがうまく行ったなら、受験での合格が得られるのはもちろんのこと、先々の長い学びの人生に確かな足がかりができたと言っても過言ではありません。

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