わたしは、体育がきらい。でも、今の学校に転校してくるまで、こんなじゃなかった。前の学校では、走るのがおそくても、鉄ぼうでさかあがりができなくても、みんな笑顔でわたしを助けてくれた。だから、体育がいやで学校に行きたくないなんて、考えたこともなかった。
それに、新しい団地にひっこして今の学校に転校してから、ママがこわくなった。前はやさしかったママが、今ではまるでわたしだけの鬼コーチだ。今日も、学校から帰ってきたわたしの体そうぶくろを見て、ママの目がきらっと光った。
「今日の体育はとびばこだったの？だったら、ほかの子に負けないように練習しないと」
　いつでもテキパキしているママには、わたしの気もちはわからない。でも、大好きなママががっかりするのを見るとかなしくなるから、ママの言うことにはさからえない。こうやって、今日もまたママのとっくんがはじまるんだ。