『ぽけっとの海』
　北の国に、としとったりょうしが、五人の子どもとすんでいました。とうさまのりょうしは、りょうの名人。ところがある日、たおれて、そのままながいこと、とこについてしまいました。青いひろい海にでかけられそうもありません。けれど、とうさまは、もう一ど、あの海がみたいと、くるしいほどにねがいました。
　そこでとうさまは、五人の子どもをまくらもとによびあつめました。
　――わしはもう一ど海へゆきたい。海の風をすうてみたい。なみに、ゆられたい。
　――そんなこと、なんでもない。
　一ばん上のむすこがいって、そとへとびだしました。