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6年生の今月の本


12歳、ぼくの夏 タイトル 12歳、ぼくの夏
著者 江崎 雪子
出版社 ポプラ社
 

 純の両親は、二歳のとき離婚した。純はずっとお父さんとくらしていたが、4年前の小学校二年生のお正月に顔もおぼえていないお母さんの家にうつってきた。まったく記憶のないお母さんやおじいちゃん、おばあちゃんといっしょに暮らすようになって、純は他人のなかにいるように気づまりだった。そんな純にとって、高志は心をゆるせる一番の友だちだった。海辺の町から山あいの村に、家も学校もかわり心細い想いでいた純を、高志はいちども「よそもん」と差別したことがなかったのだ。

 ある冬の日の朝、おばあちゃんが近所の豆腐屋さんから聞いてきたうわさ話をにぎやかに話していた。「山の上の、ほら、お政ばあさんが死んでからずっとあき家だったあの家にね、男の人がこしてきたんだって。お政さんの孫にあたる人だそうだよ。」なんでも、その男の人は学校の先生らしい。どうして12月などという時期に、こんな田舎に引っ越してきたのかみんながふしぎがっているそうだ。

 高志に会うと、さっそくその話になった。
「聞いたか?」
純はだまっている。
「知らないのかぁ」
高志の声が大きくなる。
「山の上のあのぼろ家にさ、男の人がひっこしてきたんだってさ。学校がおわったら、ちょっと見にいかないか」
純は気がすすまない。
「じゃ、純、いちど家に帰ってから一時半にあつまろうぜ」

  こうして、山の上の家まで偵察に行くことになった。

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