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6年生の今月の本


さよなら、「いい子」の魔法 タイトル さよなら、「いい子」の魔法
著者 ゲイル・カーソン・レヴィン
出版社 サンマーク出版
 

 生まれたばかりのとき、わたしはまぬけな妖精(ようせい)ルシンダに呪いをかけられた。「従順(じゅうじゅん)」の呪いだ。「これからは、エラはどんな命令にも必ずしたがうでしょう。」 それがどんなに恐ろしいことか、おかあさまと料理人のマンディはよくわかっていたから、必死にルシンダを説得したが、ルシンダはとうとう呪いをとかずに消えてしまった。とんまな彼女は、わたしにすばらしい贈(おく)り物をしたつもりだったのだから。

わたしはいつも危険(きけん)ととなり合わせにいた。もし誰かに「片足ではねていろ」と命令されれば、一日をすぎてもずっとはねていなければならない。どんなにわたしがそうしたくないと思っていても、命令されたらもうだめなのだ。呪いをとけるのはルシンダだけだった。マンディは、いつかルシンダの手をかりずに呪いはやぶられるだろうと言ったけれど、どのようにすればいいのか、わたしにはわからなかった。

 わたしが十五才になるちょっと前、おかあさまが風邪(かぜ)をこじらせて死んだ。ひとりで泣いていると、シャーモント王子がやって来た。
「シャーでいいよ」
王子は言った。

「きみのことなら、何でも知ってるんだ。きみが、ものまねができるってこと。」
「あと、妖精物語を自分でつくっちゃうこととか、物をよく落とすこととか、よくつまずくこととか。お皿をひとそろい、全部わったことがあるのだって、知ってるんだ」
「あれは氷ですべったのよ!」
シャーもわたしも笑った、ひどく泣いたあとだから、まだ声がふるえていたけれど。

 こうしてわたしはシャーと友だちになった。わたしはシャーが好きだった。いばったり、人を見くだしたりしない。それなのに、わたしはフィニシング・スクールに追いやられることになってしまった。おとうさまはいつだって、なんでも自分の思いどおりにしたがるのだ。

「行かないわ」

 むだだとわかっていても、反抗(はんこう)せずにはいられなかった。フィニシング・スクールは、お行儀(ぎょうぎ)を教えるだけの、たいくつできびしい学校だ。そうでなくても、オルガ夫人のむすめ・ハティとオリーブがいる。ふたりは、自分のこととお金のことしか頭にないような子どもだった。

「わたしは行かないわ」
「おまえはわたしが言ったとおりにするんだ」

 わたしが必ず命令にしたがうのだとハティが気づくのに、たいして時間はかからなかった。
「ひざまずいて、くつをぬがせてちょうだい」
「このオートミール、くさっているわ。食べてはだめよ」

 いつもいやらしいうす笑いをうかべながら、ハティは命令をした。たとえばハティがいなかったとしても、フィニシング・スクールでのつき合いはあまり楽しいものではなかっただろう……。こうまんちきな先生と生徒ばかりがたくさんいたから。

 ただひとり、アレイダという少女だけは別だった。わたしたちはすぐに友だちになった。やさしくて心の広い、そして蜜(みつ)のようになめらかに歌うアレイダ。友だちがいるっていうのは、すごくすてきなことだった。

 けれど、そんな日々は長くはつづかなかった。
「あんなお下品な人とつきあうのはやめた方がいいわ」
ハティに言われ、わたしは答えた。
「アレイダは、あなたなんかよりずっと上品よ。それに、自分の友だちは自分でえらぶわ」
「あら、そう。しょうがないわねえ。エラ、アレイダとの友情をおわらせなさい」
その夜、わたしはフィニシング・スクールから出て行った。ルシンダに会い、この呪いをといてもらうために……。

【 「いい子」でいなければならない呪いをかけられた少女エラ。しかしエラは、明るさとユーモアを失わず、「自分らしくあること」を決してあきらめません。自分で考え自分で決める人生を、エラはとりもどすことができるでしょうか? 読みすすめていくと、このお話が、みなさんもよく知っている昔話とつながっていることがわかります。あなたはどこで気がつくでしょうか? かなり読みごたえのある本ですが、ぜひ読んでみてください(女の子におすすめです)。】

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