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6年生の今月の本


マイマイ新子 タイトル マイマイ新子
著者 高樹 のぶ子
出版社 マガジンハウス
 

 9才の新子(しんこ)には、「マイマイ」が二つあった。「マイマイ」 とはつむじのこと。新子のつむじは、ひとつは頭のてっぺんについているが、もうひとつは額(ひたい)の真上にのっている。新子は母の鏡台(きょうだい)をのぞくたびに、絶望的になった。前髪を切りそろえても、マイマイのせいで右側の毛だけが上向きに生えているので、どんなに押さえてもはね上がってしまう。ヘアピンさえもはねとばすこの強情(ごうじょう)なつむじ! 妹の光子にはマイマイがないから、おかっぱの前髪はいつもきれいにそろっている。それに、光子は連れて歩きたいほどかわいい……。

「同じ家に生れたのに、こんなの不公平だ!」

光子が怒ると、マイマイも一緒に怒る。腹が立ったり、くやしい気持ちになったり、悲しい気持ちになったりしたときだけではない。友達にやさしくされたり、先生にほめられたりしてうれしかったとき、「マイマイ」 は新子の額で、ぴん! と立ち上がるのだ。

 それから、なにかドキドキするようなおもしろそうなことが見つかったときも……!

 新子が田んぼに出かけると、祖父の小太郎は、田んぼの周りを流れる直角の小川のひみつを教えてくれた。その小川の上には小太郎が作ってくれた、藤蔓(ふじづる)のハンモックがかけられている。そこは新子にとって、いつだってだれにも邪魔されることのない自分だけの場所だった。

 チョコレートは 「ヒョコレーホ」。はじめてのぞいた顕微鏡。台風からみんなをまもってくれる祠(ほこら)のお大姉様(たいしさま)は、英語を話す。 山の防空壕(ぼうくうごう)には山賊(さんぞく)がいる。 ないしょで出かけた映画館。いなくなったタツヨシのお父さん。それから、それからも……。

……西暦1955年、昭和30年の日本は、どこもかしこものんびりしていた。テレビも冷蔵庫もまだないけれど、新子のまわりにはゆたかな自然があって、まわりには自分を見守り、しかってくれる大人たちがたくさんいた。そしてなにより、新子にはおじいちゃんがいた。おもしろくてふしぎで、楽しいことを見つけることが大得意の新子が、珍騒動を巻きおこす!

【 昭和30年。高度成長期前の日本。 まだそこかしこに戦争の傷あとを残しながらも、身近には豊かな自然があり、大人も子どもも懸命に力を合わせて生きていたころの日本が、9才の新子のみずみずしい目を通してやさしく描き出されています。

 この時代を知らないみなさんも、どこかなつかしさを感じたり、小さかった頃のことを思い出したりするかもしれません。物語には、新子が終戦から5年後の広島に出かける場面も登場します。おとうさんやおかあさんにもおすすめの一冊です。】

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