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6年生の今月の本


霧のむこうのふしぎな町 タイトル 霧のむこうのふしぎな町
著者 柏葉 幸子
出版社 講談社
 

 夏休み。山の中の小さな駅についたリナは泣きたくなった。おとうさんが「今年は霧の谷へ行ってみろ。むこうへは連絡しておくから」と言うから、てっきり迎えがきてくれるものだと思っていたのだ。だが誰も来てくれない。道をきいても「霧の谷? さあ、きいだごどねえなあ」と言われる始末。ちょうど通りかかったリヤカーつきこううん機に乗せてもらって、リナは「霧の谷らしい」ところへ向かう。

「帰っちゃおうかな」
とリナがまよい始めると、持っていたかさがぱっと飛んだ。拾おうと追いかけると、かさはまた先へ行く、
――追いかけているうちに、リナはふしぎな町に足をふみ入れていた。洋館の立ち並ぶ、外国のような町だ。

 かさに案内されるまま、大きな家の玄関に入ると、
「リナかい。入っておいで」
という声がした。部屋に入ると、ソファに小さなおばあさんがすわっている。
「おまえは六年生にもなるのに、あいさつもろくにできないのかい」
「上杉リナです。お世話になります」
「誰があんたの世話なんかするって言ったね」
「それじゃ、帰ります」
「誰が帰れって言ったね」

――まったく、いじわるな声だった。 このピコットばあさんの話では、ここは下宿屋で、生活費を自分で働いてかせぎ、誰にも世話をかけてはいけないらしい。リナは困った。自分が何もできないことはよくわかっている。家ではお母さんの手伝いなんてしたこともないのだ。

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