「早熟性」について、もう少し詳しく考えてみましょう。

11月 28th, 2008

 小学生のなかには、早くから大人っぽい言葉が使え、難しい本を読めるようになる子どもがいます。たとえば、5年生でもう大人向けの翻訳物のSF小説を楽しむお子さんがいます。一方、同じ5年生でも幼さが抜けきれず、「宇宙人が地球を侵略した」といったような架空の話を読んで、「先生、この話は本当にあったんでしょうか?」と、不安そうな顔で質問してくる子どももいます。両者が同じ国語の問題に取り組んだなら、どちらが有利かは言うまでもありませんね。

 これは、一人ひとりの成長曲線、人生体験、家庭での会話の量や質、さらには読み聞かせ、読書などの経験がそれぞれに違っていることに起因するものと思われます。しかし、かなり長い年月をかけてついた差ですから、短期間に遅れを取りもどすのは極めて難しいことです。

  今、自分は何がわかり、何がわかっていないかなど、自らの状況を客観的に掌握することを「メタ認知」(“メタ”は、“上位の”という意味で、ここでは「自分の認知の状態を認知する機能」を示す)と言います。この「メタ認知」も、早熟型の子どものほうが発達しており、学力差を生む原因となります。メタ認知の発達した子どもは、自分の理解の度合いを掌握し、対策の方法を考えるなど、自己認識を問題解決行動に移すことができますから、学力を伸ばすうえで大いに有利だと言えるでしょう。

 また、明日の授業の準備として優先すべきは何か、どこまでやっておくべきかなどについて、自分で判断できる子どもは、効率の高い勉強ができます。こういうことも早熟型の子どものほうが得意であり、奥手の子どもは苦手にするものです。

 こうした「発達度」の個人差は、指導にあたる私たちを悩ませる問題です。中学受験に間に合うかどうか、微妙なところで明暗を分ける原因の一つだからです。ただ、この差はいつまでも続くのではなく、やがて遅れは解消されていくものです。そういうことも、親は十分に認識しておく必要があるでしょう。

Posted in アドバイス, 中学受験

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