剣の道は、学問を究める道に通じる ~その2~

12月 24th, 2008

 前回は、学力を身につけるには、まずもって基礎・基本を固めることが肝要だということを述べました。しかし、この基礎・基本を固める学習が質・量ともに脆弱な状況に陥っています。

 多くの教育熱心なご家庭は、家庭勉強に配慮したり、基礎の身につく塾に通わせたりするなど、そのことへの対策を講じておられます。基礎・基本が不十分なまま中学・高校生になると、勉強を放棄するか、伸び悩みで苦しむしかありません。「守」でつまずくと、もはや「破」も「離」もなくなってしまうのです。近所同士の交流が少なくなくなり、異年齢の子どもの集団が見られなくなった今日、地域社会の教育力は衰退の一途をたどっています。子どもをもつおとうさんおかあさんが、このことを自覚しておられるかどうかは、子どもの学力形成に大きな影響を及ぼすことでしょう。

 心理学者A・ジャーシルドは、「ある機能が一定の程度まで発達すると、人間はそれを自発的に使用しようとする」ということを述べています。「自発性使用の原理」と呼ばれるこの考えは、子どもの学習に当てはめることもできるでしょう。すなわち、学習という行為を支える基礎・基本が、子どもに一定の水準以上身についていなければ、子どもの自発的な学習は実現しません。これでは、いくら「子どもの自発性を尊重した学習」の重要性を説いたとしても、「絵に描いた餅」に終わってしまいます。

 ただし、「基礎・基本」の習得にあたっては、重要なポイントがあります。それは、大人の押しつけによって勉強させるのではなく、子どもが勉強に対してプラスのイメージをもつよう配慮してやるということです。基礎・基本の習得が学習の能動性を引き出すような流れは、無理強いの勉強ではつくれません。

 家庭学習研究社では、4年部開始から6年部の4月末までの2年あまりを「基礎力養成期」と位置づけ、基礎基本の徹底をはかっています。かなり長い期間ですが、「基礎・基本」の習得は、学力形成にとってそれだけ重要なものなのです。この「基礎力養成期」の学習指導において、私たちは勉強の面白さ、自分で課題を解決することの喜びを味わえる機会を数多く子どもたちに提供するよう努めています。そして、おとうさんおかあさんには、お子さんが家庭でやるべき勉強をやり遂げるよう、粘り強く励まし、応援していただくようお願いしています。家庭と学習塾の連携で、子どもにとって理想の学習環境をつくってやるのです。初めからちゃんと一人で勉強できるお子さんはいません。未熟な小学生の勉強ですから、軌道に乗るまでが大変です。しかしながら、ここをうまくクリアすると素晴らしい可能性が子どもに開けてくるのです。

 繰り返しになりますが、学習であれ、何であれ、まずは「まねる」段階、つまり「守」をしっかりと固めておくべきです。「守」の習得にこそ、時間もエネルギーもたっぷりと充てなければなりません。ところが、中学受験においては、「合格」というとりあえずの目標があります。それに惑わされて「守」がおざなりにされ、「破」や「離」に走るケースも出てきます。やり込み主義、暗記主義の勉強も、よいと思ってのことというより、目先の結果ほしさから生まれたやむを得ない手段なのかもしれません。
 

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