剣の道は、学問を究める道に通じる ~その3~

12月 26th, 2008

 東京大学大学院教授の市川伸一先生は、認知心理学者であり、子どもの学習意欲に関する書物を多数著しておられます。その市川先生の本にも、「守」「破」「離」を使って、現在の子どもたちの学力低下問題について触れた記述があります。

 そのおおよその内容は、『今日の教育は、「守」「守」「守」と、型の習得に終わってしまっているのではないか』というものでした。教育が「守」に終始した原因の一つとして「ゆとり教育」もあげられるのでしょうが、もっと言えば、家庭教育の衰退とも言うべき現象があるように思います。子どもが家庭で勉強しなくなっているのです(大がかりに行われた様々な調査データがそれを裏づけています)。地域社会の教育力が落ちているうえに、家庭教育までが衰退したとなると、子どもを取り巻く教育環境は絶望的と言うしかありません。

 この問題は、私たちにはどうしようもないことですが、小学校低学年の段階から「家庭学習」の習慣をつけるよう、学校と家庭による一致協力態勢を築くべきではないでしょうか。学校の勉強だけで基礎・基本がしっかりと身につくはずがありません。何とかして多くの子どもが家庭で勉強に励む日を実現したいものです。

 翻って、私たちの学習塾はどうでしょうか。私たちは、家庭学習の重視、自学自習の姿勢の確立を謳う学習塾としての方針をご理解くださる、たくさんの家庭のお子さんを預からせていただいています。したがって、もとから意図しているとは言え恵まれています。教室での「授業」と「家庭学習」は、互いに切り離せないものとして絶えず連動しています。まねる段階の学習を、教室と家庭で繰り返すことで、基礎・基本の徹底をはかることができるのです。

 ご存知のように、子どもは何でもまねてそれがどういうものかを学びとります。興味をもったなら、遊びでも勉強でもまずはまねようとします。まねて型を学びとる勉強を子どもはいといません。この「守」の段階で、ものを知ること、自分で考えて理解することの喜びをたくさん味わわせる。そうすれば、自分で考えて工夫する段階、すなわち「破」へと子どもは否応なく進んでいくものです。

 「基礎力養成期(4年生~6年生4月末)」の学習を通じて、まねることをしっかりと経験した子どもは、「応用力養成期」の学習が始まると徐々に「破」の段階へと進んでいきます。「もっと成績をあげたい」「より高度な内容の学習をやりこなせるようになりたい」という欲求から、今の勉強に満足せず、自分にあった勉強法、納得できるやり方へと自ら勉強をグレードアップさせていくのです。

 「守」の段階にとどまらず、次の「破」の段階へ、さらには「離」の段階へと子どもたちが学問を究め、先人の域を超えて行くには、小・中学生時代にもっともっと充実した学びの体験をすることが必要です。それを将来ある子どもたちに保障することも、私たち大人の大切な役割ではないでしょうか。子どもたちには、是非ともこうした体験をたくさん積んでほしいと願っています。

 1~3の内容は、かなり重複していたかもしれません。学力形成において小学生時代の学習体験は決定的な影響を及ぼすものであり、あえて強調させていただいた面もあります。お子さんの学力形成の道筋を再考する契機にしていただければ幸いです。
 

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