お子さんは、どんな読書をしていますか?
1月 21st, 2009
「うちの子は、読書が大好きでよく本を読んでいるのに国語の成績がよくありません」――これは、小学校高学年のお子さんをもつ親御さんからよく受ける相談です。「国語力をつけるには読書」という考えは、一般に浸透しています。ですから、「本をたくさん読んでいれば、自然に国語力が備わるだろう」と期待されていたのでしょう。ところがあにはからんや、国語の成績はちっとも伸びません。どういうことなのでしょうか。
確かに読書は読解力をつけるには効果があります。しかし、どういう読書をしているかによって、読書が読み取り能力の上達に寄与する場合もあれば、そうでもない場合もあるようです。たとえば、たくさん読書をしている割に、国語のできない子どもの読書の様子をご紹介してみましょう。このような子どもは、できごとの結末がどうなるのか、主人公が難題を解決できるのかどうか、つまり筋立てばかりに気をとられ、場面・場面にちりばめられている作者の細かい仕掛けや表現の面白さにほとんど目を向けていません(実は、そういうところを読んでいないと問題は解けないことが多いのです)。
無論、子どもにとっての読書は楽しいものであるべきですから、そういう読書も一概には否定できません。実のところ、筆者もエンターテインメントに割り切った読書は大好きです。しかし、いつもこうでは読書が与えてくれるはずの恩恵に浴することはできません。もう少しじっくりと、主人公になりきり、途中の様々な表現にも注意を払い、情景を思い浮かべながら追体験をしていくような読み方をする必要があります。
どうしたら、無理強いせずにそういう読書ができる子どもになるのでしょうか。あるとき、ふとしたきっかけでヒントを得ることができました。読み聞かせの専門家の本を読んでいたとき、「初めの頃、どうしてこんな地味な本を子どもたちが好むのかわかりませんでした。でも、今ならわかります」というような記述が目に止まったのです。以下は、筆者のうろ覚えですが、大体こんなことが書いてあったと思います。
「きれいな色彩の絵があるかどうかは、子どもにとって問題ではないのです。読み聞かせていると、子どもたちは主人公の小動物になりきり、途中の危険が迫ってくる場面の一つひとつに反応し、ハラハラドキドキしたり、ホッと安堵の表情を浮かべたり、ワッと歓声をあげたりします。そういうときには、子どもたちは言葉の一つひとつをかみしめながら、ひとことも聞き漏らさずに聞いています。読み聞かせの効果を引き出すには、子どもを引き込める、よくできたストーリーであることが大切なんですね……」
そう言えば、高い学力を得ている子どもは、「よく親に読み聞かせをしてもらった」ということを話してくれます。よいストーリーに恵まれ、上手に読み聞かせをしてもらうと、やがて一人で読書を楽しむようになってから、表現のすべてに注意を払う本当の読書ができるようになるのでしょう。読み聞かせをたっぷりと楽しみ、それから徐々に一人で読書を楽しむようになる。そういう流れをつくってやれば、子どもは「国語をがんばらねば」と思うまでもなく、高いレベルの国語力を身につけることができるのです。無論、大抵の教科は活字を通して学びますから、学力全般に秀でた子どもになるのは間違いありません。