「子どもを「勉強好き」にする方法 ~その2~
1月 30th, 2009
心理学者の波多野勤子〔はたのいそこ〕先生は、生前におかあさん方を対象とした講演会で、次のようなことを話されたことがあるそうです。
「親は、わが子が思うように勉強しないとき、つい『バカ』という言葉を使って叱りがちです。しかし、バカと言われてがんばろうなどという気になる子どもがいるでしょうか。それなのに、このバカという言葉を不用意に用いる親がなんと多いことでしょう。この1週間、わが子にバカという言葉を一度も浴びせなかったおかあさんがおられたら、手を挙げてみてください」
会場には、200人ほどのおかあさんがおられたそうですが、一人の手も挙がらなかったそうです。この話は、多くの親にとって耳が痛いことでしょう(筆者も含めて)。ほめることは難しく、その逆に感情的に叱ったり、「バカ」などという子どもを傷つける言い方をしたりしがちです。ある本に、「親は、『子どもをほめている』と言うが、その割に子どもの側は『あまりほめられていない』と思っているものだ。つまり、両者の意識にはギャップがある」――いかがでしょうか。多くの方に、心当たりがあるのではないかと思います。
親がわが子をほめる。それは、簡単なようでかくも難しいことなのです。実感されているかもしれませんが、ほめるためには観察眼が必要です。わが子のしていることを、きちんと見届けておられるでしょうか。子どものやる気を引き出すには、最高のタイミングでほめてやることが必要なのです。最高のタイミングとは、「ちょっとの努力をした瞬間」だと思います。残念ながら、親は子どもが見ていてほしい瞬間をほとんど見逃しています。そして、逆にサボったりだらけたりしているとき、つまり最悪のタイミングで叱ってしまいがちです。
話は脱線しますが、サボったりだらけたりしているときがどうして「最悪のタイミング」なのでしょうか。子どもは、サボりたくて、だらけたくてそうしているわけではなく、常にやるべきことは何かを頭の隅で意識しています。ですから、親が注意すると「わかってる」「今やろうと思っていたのに!」という怒りの感情が湧いてきます。したがって、子どもがやるべきことではないことをしているときに叱るのは、逆効果を招く最悪のタイミングなのです。親にすれば子どもに都合のよい理屈ですが、それが子どもの側の言い分なのです。
一日一度はわが子をほめる。これを実行してみませんか? とりあえず、一日だけでも徹底的にわが子を観察し、何でもいいからほめるタイミングを探してみましょう。そして、すかさず“最高のタイミング”でほめてあげてください。きっと、お子さんの表情は明るくなるはずです。ただし、ほめた後すぐさま「もっと勉強しようね」と、本音を切り出すのは我慢してくださいね。
余談ですが、波多野先生がお亡くなりになったとき、葬儀の会場で先ほどご紹介した講演会の録音テープが流されていたそうです。