子どもをがんばらせるおかあさんとは ~その1~
2月 23rd, 2009
再び、ピグマリオン効果についての話題を取り上げます。子どもの知的能力の向上に最も深く関与しているのは、何と言っても毎日家庭で躾・教育にあたっておられるおかあさんです。おかあさん発で、子どものピグマリオン効果を引き出すよい手だてというものはあるのでしょうか。今回は、それを話題にしてみたいと思います。
実は、この話題を頭に思い浮かべた瞬間、「これは結構難題だぞ」と、自覚せざるを得ませんでした。というのは、総じて日本のおかあさんは、子どもへの愛情表現や激励を苦手としておられるからです。たとえば、アメリカ・ヨーロッパあたりでは当たり前のように行われているハグ(抱きしめる)という行為も、日本のおかあさんは恥ずかしくてなかなかできないものです。
それでも、大人が差し出す期待が直接効果を示す小学校低学年については、おかあさん方も照れずにわが子への期待を態度と言葉で伝えることはできるでしょう。何よりも、子どもがまだ小さくてかわいらしいので、親も身構えることなく気持ちを伝えやすいものです。
お子さんがまだ低学年のご家庭におかれては、親は何を期待しているのか、どうしてほしいのかをしっかりと話して聞かせ、子どもがそれに応えるべく努力したときには大いにほめてあげていただきたいと存じます。何度も書いたように思いますが、子どもの様子を親が見守り、タイミングよくほめたり励ましたりしてやれば、子どもはそれこそ必死になってがんばろうとするものです。「やればできるんだ」という自信をつける体験をたっぷりとさせてあげてください。
親が差し出す期待は、今の子どもの現状から考えて適切なレベルを設定することがポイントです。成功体験をさせて、子どもに自信を植えつけ、積極性を引き出すための働きかけですから、高すぎる期待を差し出したのでは、子どもの努力やがんばりは引き出せません。
では、子どもが中~高学年の場合はどうでしょうか。確かに、子どもも4~5年生ともなると、見え透いた言い方をしたのでは、「どうせできないと思っているくせに」とか、「ボクには無理に決まっている」など、正面切った受け止め方をしてくれないものです。
しかし、基本的には子どもは親の期待に励まされ、動かされるものです。大学の研究者の調査によると、子どもが小学生いっぱい、もしくは中学1年生までは、子どもの学習意欲のもととしていちばん大きいのが「親から寄せられる期待」だそうです。お子さんとの現在の関係において、不自然でない形で期待を示す方法をいろいろ考えてみてはどうでしょうか。
たとえば、お子さんが家庭学習研究社などの学習塾に通っておられるご家庭では、親がいちばん興味と関心を寄せるのは成績だと思います。しかし、それをあからさまに悟られたのでは、親の期待通りにがんばる姿勢は育ちません(「親は成績のことしか言わない」と子どもに思わせてよいことは一つもありません)。まず、毎日やるべきことは何かを子どもに考えさせ、子どもが自分で決めた計画に基づいて勉強する流れを尊重してやる必要があります。そして、自発的な取り組みをすること自体が期待であり、そういう努力をしたときには何よりもそのことを喜んでやる必要があります。
「親は成績のことしか関心がない」と子どもに思わせるか、「親は自分のがんばりを喜んでくれる」と思わせるかでは、子どもの態度に雲泥の差が生じるものです。子どもは子どもなりに親の指し示す期待が筋の通ったものかどうかを判断します。納得のいかない期待や無理な期待を差し出されると、“親への信頼”という、親子関係で最も大切なものが損なわれてしまうおそれがあります。