子どもをがんばらせるおかあさんとは  ~その2~

2月 25th, 2009

 引き続き、おかあさん発で引き出すピグマリオン効果について話を進めます。前回は、子どもが納得する期待を差し出すことが必要であるということを書いて終わりました。親の期待に無理があったり、筋が通っていなかったりでは、子どものがんばりが引き出せないばかりか、親への信頼の気持ちが損なわれるおそれがあるからです。

 しかし、なかには「親が子どもをがんばらせるために、気を使ってものを言うなんて」とか、「がんばらなければ、ビシッと叱るのが当然。甘っちょろい接し方なんてできない」とおっしゃるおかあさんもおられるかもしれません。しかし、世界的に見て、自己有能感の最も低いのが日本の子どもだという国際比較調査の結果もあります。そして、その原因は親の期待過剰や、親に認めてもらえないことからくる自信喪失なのです。

 親の接し方一つで、子どもの将来が大きく変わるとしたら、子どもの成長につながる方法を採ることが大切ではないでしょうか。「がんばって当然。がんばらなければ叱咤激励するまでだ」というのでは、子どもはがんばりのエネルギーを得ることはできません。そんな親子関係のまま子どもが思春期に至ってしまうと、親はどんなに後悔しても、もはや自分の手に子どもは戻ってきてはくれません。

 子どもが今がんばってできる範囲の期待を差し出し、子どもを見守る。そして、少しでも努力したなら、それを認めてやる。結果が出なくても、努力する姿勢が見られたなら、大いに喜んでやる。そのような親の姿勢は、子どもに自信を植えつけ、親への信頼の気持ちを育てます。それこそが、長い目で見たときには子どものいちばんの成長の源になるのだと思います。

 中学受験を終えると、子どもたちの大半は私立や国立の進学校に入学します。そこで待っているのは、ただ整備された理想の教育環境とばかりは言えない面があります。というのは、中・高一貫の進学校は、厳しい競争と序列の世界でもあるのです。

 心理学の世界で言われていることですが、「能力の高い集団内での順位や序列は、できる生徒もできない生徒もいる集団内でのそれとは、比較にならないほど精神的なダメージにつながり易い」のです。なまじ能力をもち、プライドが高い生徒の集団内で競争をすると、下の順位に立たされた人間は精神的に辛い状況に追い込まれてしまうのです。そして、それは思春期から青年前期という人間形成上の大切な時期にあたり、しかも6年間という長きにわたるのです。

 万一、学業成績で不振な状態が続いた場合でも、自分を見限って努力を放棄するような人間にはしたくないものです。「うまく行かないのは能力のせいではない。努力が足りないからだ」と受け止め、コツコツがんばっていく姿勢を育てておくべきではないでしょうか。わが子をそういう人間にするには、“結果”より“努力”を重んじ、努力をすること自体が親の期待であるというスタンスで親は子どもに接することが必要だと思います。

 そういう親のもとで育った子どもは、自己肯定の気持ちを失いません。そして親の期待をしっかりと受け止め、どんな状況におかれてもやるべきことを放棄することはありません。中学・高校生になってからますます勉学に打ち込み、もはや親のサポートは要らないほど成長したわが子を見たいなら、親に全幅の信頼を寄せ、すべてを親にすがって生きている今のうちにこそ、「親の期待は何か」をしっかりと伝えてやるとともに、親子の強固な信頼関係を築いておくべきだと思います。

 親の差し出す期待が、この先ずっとピグマリオン効果を生むかどうかは、結局親の愛情が子どもに伝わるかどうかで決まってくるのではないでしょうか。 

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