4年生は「意味的理解」への転換点
3月 4th, 2009
世界の物語には、構成面において大変共通する特徴がいくつか見られます。代表例の一つに、「三回繰り返しの法則」というのがあります。同じパーターンの短い話が三回繰り返され、全体で一つのお話になっているもので、三つのお話の真意は全く同じです。その真意とは、何らかの生き方や戒め、教訓などが多いのですが、そうしたお話に心当たりのある方もおられることでしょう。
ある年、4年生の国語の授業で、この「三回繰り返しの法則」がそのまま当てはまるような物語を素材に学習しました。登場人物や、起こるできごとこそ違うものの、伝えようとしていることは全く同じ話です。さて、子どもたちはこの物語の言わんとすることに気づいてくれたでしょうか。
その日の授業は、一通りみんなで読み合わせをする形で始めました。次に、授業の導入として、一つひとつのお話に登場する人物の名前を何も見ずに言わせてみました。すると、みんな実によく覚えていて、ほとんど全員が手を挙げたので驚きました(すごい記憶力です!)。そして、口々に「この話はおもしろい!」と言ってくれました。
ところが、いざその日の授業の核心部分に進むと、理解の度合いに大変な個人差があることがわかりました。三つの話の根底にある共通性に気づかせることがねらいでしたが、すでに気づいていて、サッと手を挙げる子どもが7~8名いました。試しに小声で言わせてみると、確かに正解を得ていました。しかし、残りの十数名は「わかんないよ」と、首を傾げています。そこで、「三つの話、どんな話だったかな?」と、ヒントを言ってみました。すると、「あ、わかった!」と残りの半分くらいの子どもが手を挙げました。残念ながら、まだわからない子どもも全体の三分の一ぐらいいたようです。
このことが意味することは、中学受験を考えておられるご家庭にとって大変参考になると思います。小学4年生の思考レベルに大変バラツキが多いということは、この年齢が「エピソード的理解」から「意味的理解」への転換期にあるということです。「語彙の爆発」が4年生のころ起こり、思考の変化を引き出すことと見事に一致しています。この4年生こそ、抽象的思考への発展が期待される時期なのです。ここをうまくクリアできれば、書物を通じたコミュニケーションが断然楽になり、受験勉強も随分はかどるに違いありません。