親に必要な受験のサポートとは?
3月 9th, 2009
このところ、子どもの思考の発達をテーマに書いてきました。わが子の現状を振り返りながらお読みになった方も多いのではないかと思います。抽象的な思考や論理的な思考の発達度は、子どもの早熟性とも関わりますが、“言葉”の生活という観点から家庭で配慮すれば、状況はかなり変わってくるものです。
早くから計算や漢字などに手間暇かけて取り組み、それらに習熟したお子さんが、受験でサッパリ通用しない例をこれまでたくさん見てきました。これは、思考のツールとしての言葉の存在がないがしろにされた結果だと言えるでしょう。
学習は、具体的に見えるものを覚えたり操作したりすることだけではありません。言葉という記号を介した間接体験によって、目の前にないものの存在やその性質を知ったり、物事の核心にせまったりするなど、より高度な頭脳作業も含まれます。そして、後者のような学習は、学年が上がるほど重要度を増していきます。学力形成の軌跡は、言葉の発達とまさに期を一にしていると言えるでしょう。
お子さんの中学受験を視野に入れておられる親御さんにお願いしたいのは、勉強の面倒を見たり教えたりすることではなく、お子さんの学習を促進するための「言葉の発達」を後押しすることです。具体的に言うと、日常生活における「親子間の会話」の充実です。
以前、学年が上がるごとに勉強の主役は「書き言葉」になっていくということを書きました。では、話し言葉はどうでもいいのかというと、そうではありません。自分の考えを、順序よくわかりやすく相手に伝えようと努力するプロセスが、子どもの思考回路を鍛えてくれるからです。
今頭の中に浮かんだことは、実際にはまだ整理整頓されておらず、まとまった形として意識にのぼっていません。それを符号化して(コード化して)まとめあげるプロセスが思考なのです。このような力を育て鍛えるには、思考→コード化(言語化)→音声という一連の脳内回路を循環させる必要があります。そのために、最も望ましいのが家庭内の会話なのです。
家庭内のおかあさんとの会話なら、お子さんも緊張を強いられることはありません。また、お子さんの現在の状態に合わせ、会話のペースを設定できますし、おかあさんが用いる言葉のレベルも、お子さんに合わせることができます。そうやって、会話という形で得られた情報をもとに、お子さんが思考し、そして自分の考えを音声にして表すことを繰り返すうちに、お子さんの思考回路はどんどん鍛えられていきます。さらに、新しい語彙の活用の幅が少しずつ広がっていき、それがまた思考のレベルアップに寄与するという好循環が生まれてくるのです。
ただし、そうした一連の鍛錬に付き添い、相手ができる人は限られています。ズバリ言うと、おかあさん以外にはありません。
おかあさんには、毎日お子さんと会話をする時間をできるだけとってあげていただきたいと思います。それが、お子さんの学力形成にとって何よりの後押しになるからです。また、こうした時間を設けたことは、親子の信頼関係を築くという意味においても、大変意義のあることです。
なお、「会話、会話って言うけれど、どういう会話をしたらよいのかわからない」というおかあさんもおありでしょう。このことについては、機会を改めてなるべく具体的にお伝えしようと思います。