おかあさんは、最高の言葉の先生

3月 13th, 2009

 前々回、前回と、子どもにとっていちばんの言葉の先生はおかあさんであり、家庭での親子の会話を通じて、子どもは語彙を豊かにし、表現力を身につけるのだという趣旨のことを書きました。

 では、とにかく何でも会話をすればいいのでしょうか。そうではありません。まず、おかあさんの話し方がよい手本を示すものであることが必要です。よい手本とは、「センテンスが長い」「語彙が豊富」「順接・逆説などの接続詞が多用される」「重文・複文などの複雑な構文の会話が多い」「感情的な話し方をしない」「命令や叱責の言葉が少ない」などの特徴をもった話し方を言います。こうした話し方が、複雑な思考を可能にし、語彙を増やし、理路整然と考えを伝える能力を育むのです。

 逆に、「センテンスが短い」「語彙が少ない」「接続詞が少ない」「単文で、省略が多い」「吐き捨てるような感情的な言い回しが多い」などの傾向を強くもった会話は、子どもの思考力や表現力を育てるには向きません。

 もう一つ、家庭での会話で気をつけるべきことがあります。それは、人の話に最後まで耳を傾けること。近年はゲームなどが浸透し、子どもが無言で長時間ゲームに熱中するのを見過ごしている家庭が多くなっています。そのせいでしょうか、会話のマナーが身についておらず、相手が話の最中であろうとお構いなく、自分の言いたいことをかぶせてくる子どもがいます。

 日本語は、最後まで聞かないと、相手の言いたいことを受け止めるのが難しい言語です。たとえば、最後に「否定」の言い回しが来ると、それまでの主旨がひっくり返ってしまいます。最後まで丁寧に耳を傾ける姿勢は、そのまま文章を読む際にも、じっくりと文章を読み通す姿勢につながります。人の話をちゃんと聴かない子どもが国語を苦手とするのは、当然のことと言えるでしょう。

 では、聴く姿勢をもった子どもにするよい方法はあるのでしょうか。それは、一にも二にもお子さんが言うことを、最後まで丁寧に聴いてあげることだと思います。じれったがらずに、粘り強く会話の相手をするとともに、わかりにくいところは、叱るような口調でなく、「今の話、わかりにくかったからもう一度言って」などと、言い直しをさせることも必要でしょう。

 親が自分の話すことを一生懸命聴いてくれる。このことは、子どもの心に大きな作用をもたらします。誠実に耳を傾けてくれる親を見て、自分もそうしようと思わないわけがありません。忙しい大人にとってなかなか難しいことですが、おかあさんの努力はお子さんに必ず反映されるでしょう。

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