自立勉強に向けた親の応援いろいろ
3月 23rd, 2009
家庭学習研究社にお子さんを通わせておられるご家庭の様子をお聞きすると、子どもの自立勉強をバックアップするための方法にはいろいろあることを教えられます。三つばかりご紹介してみましょう。
一つは、賢明かつ効果的で、たくさんのご家庭で試みておられる方法だと思います。どういう方法かというと、「おかあさんにはわからないから、自分でやろうね」と、初めから親が手を貸さないことを宣言するというものです。これは、教えようにも教えられない場合、教えられるのにそうする場合を問いません。
一旦親が手伝うのが当たり前になると、子どもはいつまでも親に頼ってきます。これでは、受験勉強を最後までうまく乗り切ることはできません。たとえ教えられるおかあさんでも、6年生の秋頃から取り組む入試問題には、そうそう歯が立つものではありません。この段階になって、ある日突然「自分でやりなさい」と言われても、子どもは途方に暮れるばかりです。ですから、初めから「教えない」「教えられない」と子どもに伝え、自分でやらせるようにするほうがよいのです。
「だって、私ほんとうに子どものやっていることがわからなくて、とても教えられません。だから、自分でやってもらうしかないんですよ」と、笑顔で語られたおかあさんがおられます。そのおかあさんの息子さんは、素晴らしい取り組みをしている、学年指折りの優秀なお子さんでした。
次は、「自立させる方法」とは言えないかもしれませんが、お子さんから聞いて印象に残っている話なのでご紹介します。ある日、6年生の男の子がおもしろいことを言ってきました。「うちのおかあさんたらね、ボクの算数のテスト結果を見ては目くじらを立てるんだけど、そのくせボクができなかった問題、何一つ解けないんだよ」――こう語ったその男の子の目は、愉快そうに輝いていました。
それを聞いた筆者は、思わず笑ってしまいました。というのは、その男の子が12歳にして、もう「親は頼りにならない。自分でやるしかない」と自覚していることに気づいたからです。また、意図したわけではないにせよ、その子のおかあさんはわが子を立派に自立させておられます。きっと、おかあさんの愛情がたっぷりと注がれているのでしょう。その男の子は、平均より少し上の成績を推移していましたが、最後までがんばり通し、見事に志望校合格を果たしました。
もう一つ。親としてサポートしてやれることを決め、それを入試直前まで継続しておられる家庭があり、大変印象に残っているのでご紹介してみます。ある年の1月半ばころでしょうか、一人のおかあさんからお電話をいただきました。
「今、図書館にいるんですけど、6年生の息子に読ませるよい本をご紹介いただけませんでしょうか」 「6年生と言いますと、もうじき受験ですが・・・・・・」「ハイ、でも息子にとって本を読むのが唯一の楽しみなんです。親は、本を探してやることぐらいしかしてやれませんから」「わかりました。ちょっと待ってください」
このとき、筆者は息子さんの息抜きになりそうな、とっておきの本を二冊ばかりご紹介したことを覚えています。正直言って、「入試直前に、わが子のために本を探すなんて!」と驚きました。そして、失礼ながら「よほどお子さんができるのか、逆にもう入試のことはあきらめているのか、どちらかだろう」と思いました。
それから半年以上経ったある日、5年生の保護者の集まりのとき、一人のおかあさんが、筆者に「もしかして、以前電話で本をご紹介していただいた先生ではありませんか?」と、話しかけてこられました。5年部に弟さんが通っておられ、それでその日の集まりに来ておられたのです。それがきっかけで、そのときの6年生の息子さんが誰だかわかりました。驚いたことに、学年で三本の指に数えられる、優秀なお子さんでした。
「こんなおかあさんをもったお子さんは幸せだ」と、つくづく思います。「子どもが優秀だから、そんなことができたのだ」とは思いませんでした。親としてしてやれることをする代わりに、受験勉強という息子さんの問題は、息子さんのがんばりを信じ、黙って見守ってやる。そんなおかあさんの姿勢が、息子さんを優秀な人間に育てたのだろうと思います。
たくさんのお子さんを見てきた経験から言えることがあります。それは、「親が教えると、子どもは高い学力を手に入れるかどうかに関わらず、いつまでも自立できず、親に頭が上がらなくなる」ということです。この点において、親が教えるのは賢明な方法とは言えません。親の期待の根底には、「親の域を超えて欲しい」という願いがあるはずですから。