「自学自習」は、勉強好きになることから

4月 3rd, 2009

 このところ、自学自習に関する話を書いてきました。「自学自習」というと、話が堅苦しくなりがちで、1~2回でやめようかと思ったのですが、当社の学習指導の根幹をなす理念でもあり、何回も書くことになってしまいました。今回はその最後とさせていただきます。

 専門領域で名を成している学者の本を読んでいると、そういう人のほとんどが一生を学びの場としておられることに改めて気づかされます。学者だから当たり前ですが、一生を研究に捧げる仕事に就くようになるには、そうなるだけの原因があったと思います。筆者は学生時代、教育心理学・教育理論を専攻していましたが、それがもとで今の職に就いており、また、学習塾内での仕事上の必要性から、今でも教育心理学や教育社会学、脳科学などの書物を好んで読んでいます。

 そうした書物には、ときおり著者の子ども時代のエピソードが紹介されていることがあります。それを読んでいると、学者になった人のほとんどが子どものころから勉強好きであり、「親に勉強しろと叱られたことがない」というようなことを書いていることに気づきました。

 たとえば、大阪大学大学院教授で教育社会学者の志水宏吉先生は、西宮の材木商の家に生まれておられます。両親ともに、中学以上の学歴はありません。しかし、父親が文化的なものにふれる体験をするよう働きかけてくれたこと、母親に本の読み聞かせをしてもらったことなどを通じて、いわゆる「秀才」で「勉強好き」な少年に成長したそうです。やがて志水先生は東京大学へ進学して教育社会学を学び、東京大学の大学院教授を経て、現在に至っておられます。

 その志水先生曰く。「私は、叱らずに勉強好きにしてくれた両親に感謝している」――この言葉は、わが子に学力面での大成を願っておられるおとうさんおかあさんにとって、大いに参考になるでしょう。とことん学問を追究したいという情熱は、叱られて勉強をしたのでは湧いてきません。わが子が学者になるかどうかはともかく、向上を求めて生涯学び続ける人間にしたければ、「勉強しなさい」と叱ってはダメだということです。叱らずに、いかにしてわが子を「勉強好き」にするか。とても難しい話ですが、是非若いおとうさんおかあさんには挑戦していただきたいと思います。

 「叱るなと言うが、勉強しない子どもを、叱る以外にどうやって勉強に向かわせられるのか」「叱らずに勉強好きにするなんてできそうにない」とおっしゃる方もおありでしょう。しかし、親自身が自分の身に照らして考えてみればわかることですが、「叱られてやる勉強」「命令されて仕方なくやる勉強」と、「知りたいと思ってやる勉強」「自分自身のためにやる勉強」とでは、子どもの心に大きな違いが生じます。叱られたり命令されたりすると、子どもの心に歪んだものが残るように思います。やがてそれがマグマとなって噴火するよう事態になってしまうとも限りません。

 叱らずに子どもを勉強好きにする。それは、なかなかの難題ですが、是非知恵を絞って実現に向けて挑戦していただきたいと思います。志水先生がそうであったように、親がそういうことに一生懸命に取り組んだことは、必ず子どもに伝わるものです。子どもはやがて大人になっていきますが、親が一生懸命になって働きかけてくれたことは、ずっと忘れないものです。

 

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