“易しい”テキストが私たちの“優しさ”?
4月 8th, 2009
家庭学習研究社のテキストにどんなイメージをおもちでしょうか。「広島の中学入試傾向に合わせてつくられている」「家庭学習研究社の会員だけが使っている」「基礎内容を中心に編集されていて、易しい問題が多い」などが、保護者などからよく受ける指摘です。
なかには、「薄っぺらで簡単な問題ばかり」「あんなテキストでは受からない」など、手厳しい言い方をされる向きもあるようです。しかし、概ね前述の指摘は的を射ていると言って差し支えありません。
「テキストをできるだけ易しくしたい」という方針は、1967年の創設以来変わることのない当社の信念です。なぜ「易しく」したいかというと、人間として完成途上にある小学生の受験は、できるだけ負担が少ないほうがよいと考えるからです。
中学校課程の学習は、小学校課程の内容を土台にして成り立ちます。高校課程の学習は、中学校課程の内容を土台にして成り立ちます。ですから、その時期と年齢にふさわしい勉強をしていけば、やがては高い次元の学問にも対応できる学力は備わります。無理をさせる必要はないのです。
また、難しすぎるテキスト、量的に多すぎるテキストだと、それをやりこなせる子どもの数は限られてしまいます。やりこなせない子どもは、おびただしい時間を勉強に割かねばならなくなります。その結果、生活面と成長に歪みが生じるおそれが出てきます。また、やっても理解できない、やり遂げられない受験勉強は、子どもの自信を奪ってしまうのではないでしょうか。
ただし、広島の子どもたちの主要なターゲット校の入試が、難問中心であったなら、私たちの考えは説得力を失ってしまいます。入試問題が難しければ、それなりの対策をしなければなりません。幸いなことに、広島の国・私立中学校のほとんどは、基礎内容からの出題を中心とした入試を実施しています。ですから、上述のような方針に基づくテキストの学習で、十分に合格ができるのです。
さらにつけ加えておきたいことがあります。勉強というものは、自分で計画を立て、自分で勉強の割り振りをし、自分でスケジュールを調整し、自分で取り組んでこそ、学んだことは血となり肉となるものです。そういう勉強を小学生に体験させておくことは、将来の伸びしろを育てることになります。何よりも自立した勉強を通じて、自分自身への信頼の気持ち(自己有能感)をもった人間を育てます。それが重要なことだと私たちは思うのです。
中学校へ進学してからの勉強は、基本的には子どもが自分でやり遂げていかなければなりません。その段階になって問われるのは、自分で勉強を管理し、自分で勉強をしていく姿勢です。易しいテキストの学習を通じて、自分で勉強をやりこなす力を培っておけば、それが大きな武器になるのです。
語ればまだまだ易しいテキストの効能はありますが、大まかには以上のようなことが言えるでしょう。子どもたちにとって重要なのは、人にどれだけ差をつけて受かるかではなく、無理せずに受かる学力をつけながら、先々の学習の発展に必要な構えを築いておくことです。
市販のテキストには、残念ながらこうした私たちの望みを叶えてくれるものがありません。ですから、小さな学習塾ではありますが、人的にも経費的にもかなりの投資をして、納得のいくテキストを自ら制作しているのです。できるだけ易しい内容の学習で、合格にきっちり漕ぎつけられるテキストを編む。それはさじ加減が難しく、相当な蓄積ノウハウの求められる仕事です。しかし、それをめざすことによって私たちの学習塾の文化が形成されていくのです。
“易しい”テキストを真に使いこなし、確固たる学習方法や学習姿勢を身につけてほしい。おこがましいかもしれませんが、そのような願いに基づいて指導することが、前途ある子どもたちをお預かりする学習塾に求められる“優しさ”なのだと思っています。