学習指導を担当する者のつぶやき ~その1~
4月 27th, 2009
学習塾、特に進学塾の先生というと、「できる子にばかり力を入れて指導しているのでは」というご疑問を投げかけられることがあります。ですが、実際はむしろ逆です。
勉強がちゃんとできる子どもは世話がかかりません。ちょっと指示をしてあげれば、あとは自分でどんどん先へ勉強を進めていきます。一方、勉強がうまくいっていない子どもはそうはいきません。授業の度に声をかけて励ましたり、授業とは別のノートをつくらせ、提出させては添削したりする場合もあります。勉強のよくできる子どもにかけるエネルギーを1~3とすると、うまく行っていない子どもにかけるそれは7か8ぐらいはあると思います。
しかしながら、勉強がうまくいかない子どもは、学習意欲や努力の度合い、実行力、学習方法など、学習成果に直結する要素のほとんどに問題を抱えています。「あれだけ手間暇かけて応援したのに、全然成果が出てこない」と、ため息をつくこともたびたびです。筆者の若い頃には、「特別にノートを見てあげているのに、何でこうやる気のない雑な取組みしかできないのか」と腹を立て、随分厳しいコメントを赤ペンで書き込んだものです。しかし、「それで変わるようなら、その子どもはとっくに成績は上がっているのだ」と、やがて気づきました。それでも、「少しでも力がつくように」と、自分たちでできることをやっているのが学習塾の指導担当者です。しかしながら、取り組みに最後まで変化が見られないまま入試に至ることも少なくありません。
もちろん、成績に問題のある子どもには、個人面談も正規のもの以外にもしばしば行います。そして、今の状態についてどう思っているのか、どこをやればよくなると思うかなどについて、念入りなやりとりをします。そうやって、学習成果があがらない子どもには1年中付き合い、おびただしい時間とエネルギーを使っているのです。
入試終了後、「あのとき、先生がわが子にタイムリーな助言をくださったので、子どもが凄く喜んで発憤しました。お陰様で合格できました」などとおかあさんから感謝されると、心底報われる思いをします。ところが、その多くは自分がアドバイスしたことすら記憶にないようなお子さんの家庭からで、手間暇かけてアドバイスやサポートをした家庭からは何の反応もいただけません。この仕事をして間もなく気づきましたが、塾の先生に何をアドバイスしてもらったかを親に報告するような子どもが、陰ひなたなく勉強に取り組んでいる子どもなのです。そして、ちゃんと学習成果をあげているのです。
こういう経験をして思うのは、子どもの受験勉強は親と学習塾が一致した見解に立ち、一貫して子どもの取り組みを見守りながら応援することが必要なのだということです。家庭のおとうさんおかあさんからは、「塾でわが子がどういうふうに授業を受けているかがわかる」ということ、学習塾からは、「家庭でその子どもがどういう取り組みをしているかがわかる」ということが大切だと思います。大人と子どもが信頼関係で結ばれていないと、子どもが陰ひなたなく一生懸命勉強に打ち込む受験生活は実現しないのではないでしょうか。