子どもの発想と行動力に脱帽!
5月 7th, 2009
私たちが国語の授業で使用する素材文は、6年生の場合ほとんどが入試問題をベースにしたものです。大体20~30分で文章を読んで問題を解くのが普通ですから、一つの文章の長さはB4版の紙1~3枚程度と、さほど長くありません(子どもには長いですが)。いきおい物語文などは、ある場面で突然話が始まり、出来事が急展開してクライマックスを迎え、そして尻切れトンボのまま終わることになります。いちばん盛り上がるシーンで終わり、子どもたちから、「先生、この後はどうなったの?」と一斉に質問を受けることも多々あります。
こちらも一応プロです。大概の入試素材文には目を通しており、かなりの確率で出典を言い当てることはできます。また、子どもたちの読書意欲を喚起するため、素材文の出典を調べては密かに読んでいます。そして授業では、随分前から読んでいたかのような振りをして、「さあて、この後はどうなるのかな? 実は、先生は知っているのだよ」」などとやって、子どもの興味を引き出すのです。これは誰にもできる「引っ張り法」で、子どもは確実に目を輝かせて乗ってきます。
しかしながら、全国にはおびただしい数の国・私立中学校があり、毎年毎年いろいろな本から出題されています。とてもすべての出典を特定するまでには至りません。「子どもたちが、このあとを知りたがるだろうな」と思う文章であっても、必ずしも期待に応えることはできません。
あるとき、子どもたちが「この先を知りたいよ! 先生、知ってる?」と、口々に聞いてきた文章がありました。残念ながら心当たりがなく、「先生にもわからないよ」と答えざるを得ませんでした。すると、一人の男の子が「先生、ここは勇気を出してこの入試問題の学校に電話で聞いて、何の本か調べようよ!」と言ってきたのです。「え?」と、言葉を失いました。まさか、子どもがそんなことを言い出すとは思ってもみなかったからです。そして、直にそうしたやりとりも忘れてしまいました。
1週間ほど経ったでしょうか。「調べようよ!」と言ってきた、その男の子から報告を受けました。なんでも近所に小学校の教頭先生がいるので、その先生に出典を尋ねたものの「分からない」と言われたらしいのです。ところがその男の子はあきらめきれず、とうとうその入試問題を出した中学校に電話をかけて聞いたというのです。この子の行動力に驚くともに、「もっともっと勉強して、子どもたちに何でも答えてやれる先生にならなければ」と思ったものでした。
この件を社内で話題にしたからでしょうか。入試問題の素材文がわからなかったとき、教材編集担当者が入試問題の出題校に電話で問い合わせていたのを思い出します。