“食事”と“会話”の共通点は?  ~その1~

6月 22nd, 2009

 今回のテーマから、どんなことを連想されるでしょうか。ちょっと考えてみてください。

「食事のときには会話をするよね。それを奨励したいってこと?」とか、「最近、食事のときの会話がなくなっていると、言いたいんじゃないの?」とか、「どちらも、時間が減っているってこと?」とか、いろいろお考えになったかもしれませんね。どれも間違いではありません。

 フランスの数学者アンリ・ポアンカレ(1854―1912)は、「ものごとの原理や原則というのは、もっとも繰り返しの多いことがらのなかにある」と述べています(書物からの孫引きですが)。「食事」と「会話」、この二つは、人間の日常で最も多く繰り返されていることです。これらが、人間の成長にとっていかに大切か」について考えていただくために、今回この表題を掲げた次第です。

 まず、食事について考えてみましょう。おたくのお子さんは、ハンバーガー、フライドポテト、インスタントラーメン、ピザ、菓子パンなど、いわゆるジャンクフードの類をどの程度口にされているでしょうか。

 だいぶ前の話ですが、広島県の7カ所の保育園児700~800名について、「おかあさんが夕食の支度にどれぐらいの時間をかけているか」という調査が行われたことがあります。その結果、夕食の準備に1時間以上かけた家庭の子どもと、30分以下の家庭の子どもとでは、子どもの成長の具合にかなり違いがあることがわかったそうです。たとえば、夕食の支度に時間をかけている家庭の子どもは、偏食が少ない、背が高い、運動能力に優れる、などの特徴がありました。食生活は、子どもたちの心身の発達にどうやら大きな影響を及ぼすようです。

 食事の準備時間が短いと、どうしてもスーパーなどで買ったお総菜や加工食品の割合が増加しがちです。忙しくて、ついつい上述のようなジャンクフードで間に合わせるご家庭もあるかもしれません。それは、子どもの成長にとって好ましくないという指摘が多くの識者からなされています。

 イギリスの教育評論家スー・パーマー氏も、著書において、「イギリス家庭における食生活の変化が、子どもたちの成長に好ましからざる影響を与えている」と警告しています。

「10年ほど前からわたしたちが子どもに食べさせていたものには、糖分や塩分や添加物や健康に悪い脂肪分が多すぎ、健全な肉体をつくるどころか、子どもたちをますます太らせ、不健康にするだけである。この手の食品は子どもたちの脳にもダメージを与えている。2003年にドイツで開かれた脳科学の国際シンポジウムでは、次のような意見が出されている。『子どもたちの食事をこのまま放っておけば、学習困難に密接な関係のある脳の機能低下が、いずれ大きな問題になりかねない』」

 スー・パーマー氏は、子どもの食事内容を決めているのは親だけではなく、文化全体が関わっているということも指摘していました。多くの親は、高度に加工された食品が子どもたちにとっておいしいことも、またその一方で健康にはよくないことも知っています。それでも、子どもには子どもなりの“つきあい”というものがあります。自分だけ食べないわけにはいかない場面もあるでしょう。そして、ひとたび口にすると、いつのまにかとりこにされてしまうのです。

 ジャンクフードを食べる習慣がつくと、多量の塩分や糖分や添加物のせいで、味覚が鈍くなります。味が薄く感じられるふつうの食事では満足できなくなってしまいます。その結果、肥満などの症状に悩まされる子どもも少なからずでてきます。さらには、前述のように脳の健全な発達まで犯されてしまうとしたら、親として何らかの対処をする必要があります。 

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