“食事”と“会話”の共通点は?  ~その2~

7月 16th, 2009

 食事と会話、この二つは日常生活でもっとも多く繰り返されていることです。それだけに、食事や会話の内容がどうであるかは、人間の成長や発達に深く関わってきます。

 世界的な傾向として、近年この二つに異変が生じています。前回は、子どもたちの食事の内容の変化と、それに伴って生じている問題点について紹介しました。今回は、その続きなりますが、外国での調査結果についての文面は、イギリスの教育評論家スー・パーマー氏の文献をもとにしています。

 良し悪しはともかく、現代人の食習慣の変化で大きく様変わりしたことの一つに“孤食”が増えたということがあります。家族揃って食事をとる機会が減り、食事が個人の単独の営みと化しているのです。

 2005年にイギリス政府が200世帯を対象に行った調査によると、家族揃って食事をする習慣の全くない家庭は、全体の20%に達するそうです。それ以外の家庭でも、四分の三がテレビを見ながら食事をしているという結果が報告されています。

 こうした傾向は、わが国も同じであろうと思います。原因は、家庭のライフスタイルや子どもの遊び、大人の労働環境の変化、そして冷凍食品やジャンクフードの浸透などが考えられますが、これらも世界共通の流れのように思えます。家族一緒の食事時間は、重要なコミュニケーションの場であり、子どもはそれを通じてたくさんのことを学んできました。それが今や様変わりし、家庭文化の衰退、体の異変など、憂慮すべきたくさんの問題を引き起こしているのです。

 もう一つ、外国での調査結果をご紹介しましょう。10代後半の子どもを対象にした「食事に関する調査」(ミネソタ大学)によると、両親とよく食事をする子どもほど、煙草や酒やマリファナなどに手を出さず、鬱病の傾向も少なくなるそうです。また、人種や家庭環境を問わず、成績優秀な学生には一つの共通点があり、それは家族とともに食事をとるという研究データもあるそうです。これなどからも、家族揃っての食事の重要性を考えさせられるデータだと思います。

 ついでに、筆者の経験から言えることですが、食事中の会話に限らず、会話で楽しい話題を提供し合う家庭の子どもほど学習意欲が高いという傾向があります。小学生の子どもたちは、家でのことなどをそのままに話してくれます。親子の会話がよく行われている家庭のお子さんは、表情が豊かで勉強に対しても前向きだということは、筆者が自信をもって言えることです。ついでですが、親子揃っての楽しい会話の時間には、できるだけ勉強の話、それも成績の話は避けたいものですね。

 さて、おたくでは食事の時間をどの程度かけておられるでしょうか。日本人は昔から早メシで、資料によると平均して17分程度だそうです。このことは、家族がいろいろな話題に花を咲かせ、ゆっくりと食事を楽しむ習慣をもつ家庭が少ないということを示しているように思います。ちなみに、フランス人家庭の平均的な食事時間は140分、アメリカ人家庭は70分だそうです(もっとも、筆者が手にしたデータはかなり昔のもので、ライフスタイルが世界的に同じ方向に変化している今日では、差は少なくなっているのではないかと思います)。

 以前書きましたが、小学生のお子さんの言葉の発達の鍵を握るのは親子の会話です。その会話の場として、食卓は中心的な存在といってもよいでしょう。おかあさん方は、お子さんの教育についていろいろな工夫をされていることと思いますが、改めて食卓の風景として、楽しい会話というものをイメージしてみてはいかがでしょうか。食卓は、母親の愛情を感じ取る場所であり、そしてそこで交わされる楽しい会話は、お子さんの知性の発達の源になるのだと言われています。きっと、親子の関係に望ましい兆候が表れるはずです。

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