受験生活 ~子どもとの間合いをどうする~
10月 8th, 2009
だいぶ前の話ですが、あるとき一人のおかあさんから次のような依頼を受けました。
「先生、うちの子は私の言うことを全然聞いてくれません。何を言っても反発します。でも、先生のことは信頼しています。ですから、私の代わりに先生から言っていただけませんか?」
「はぁ、それで何を言ったらいいんですか?」
「それはですね、いっぱいあるんですよ。ここにリストを書いてきましたから、読んでみてください」
手渡された紙には、息子さんに実行してほしいと願っている学習上の事柄がこまごまとビッシリと箇条書きにしてありました。いくら言ってもわが子が聞いてくれないから、わらをもすがる思いで筆者に頼んでこられたのでしょう。
しかし、筆者はその依頼のリストを見ただけで、とてもそのおかあさんの願いを聞き届けてさしあげる気持ちにはなれませんでした。なぜなら、筆者がいくらおかあさんの願いに沿って「やってみなさい」と言ったところで、問題の解決にはならないと思ったからです。
息子さんはおかあさんの過剰な干渉に閉口し、親を拒否するところまで来ていました。すでに息子さんを通じて、彼の家庭での問題についてある程度知っていたのです。仮に彼が筆者の言うことを聞き、がんばろうと多少は努力したところで、おかあさんがすぐに黙っていられなくなり、息子さんの勉強に口出しをするに違いありません。息子さんと一緒に暮らしているのは、筆者ではなくおかあさんです。家族の信頼と絆の問題に立ち入ることなどできない相談です。
さて、この話は多くの中学受験生家庭において人ごととは言えない問題かもしれません。たくさんのおかあさんがたにお会いし、話を伺っていると、やはり「親子の間合い」に問題を感じることが多いのです。特に多いのは、親が子どもの取り組みの甘さを黙って見ていられなくなり、いろいろと手出しをして独り立ちに向けた習練の場を奪っているケースです。
そこで、現在のお子さんとの関係をチェックしてみていただけたらと思います。チェックリストはやや一貫性を欠いているかもしれませんが、学習の取り組みのよいお子さんの家庭から得た情報をもとに作成しました。これからお子さんが受験勉強を始められるご家庭、受験生活の最中にある4~5年生児童のおられるご家庭のおかあさんは、是非試してみてください。
印刷用チェックシート
(見えない場合はAcrobat Readerのバージョンを6.0以上にしてください。)
結果はどうだったでしょうか。7割、すなわち14点以上あれば、現状はまずまず良好だと言えるでしょう。もし、それよりもずっと点が低いようでしたら、各項目の内容を点検し、改めるべき点をチェックしてみてください。
子どもの中学受験を考える親御さんに、放任主義のかたはほとんどおられません。逆に、子どものことに手出しをし過ぎ、子どもが自分で考えて行動する体験を奪っている傾向が強いようです。あまりに親子の間合いが近すぎると、子どもが窒息してしまいます。
親は原則を示すことは重要ですが、一つひとつの行動の決着は子どもにつけさせる必要があるように思います。それが子どもに自信を与え、自立した行動のできる人間へと成長させていくからです。中学受験が、お子さんの自立への大いなる旅立ちになるよう、ご配慮のほどよろしくお願いいたします。