せっかく4年生から通っていただいたのに・・・・・・
11月 9th, 2009
中学受験は、高校や大学への受験と違って、親がイニシアチブを握っています。とくに、受験勉強を始めた頃には、子どもも勉強の要領がわからず、親が関わらざるを得ません。
それはいけないことではありません。むしろ必要なことです。しかしながら、親が手を貸したり助言をしたりする場合、「どこまで親がサポートすべきか」や「どの時点で子ども一人にやらせるべきか」といった判断を誤らないようにしなければなりません。この判断は、ほとんどすべての家庭における、受験の成否を決する重要なポイントとなっています。
また、4年生からわが子を塾に通わせることで安心してしまい、家庭ですべきサポートがおざなりになるケースもまま見られます。弊社は、「受験勉強の面倒をすべて塾がみます」といった方針で指導する学習塾ではありません。家庭と学習塾との連携により、子どもの自立した学習を応援しながら中学入試の突破をめざしています。したがって、ご家庭に委ねる役割も多々あり、その点をご理解いただいていなければうまくいかない面も多いのです。
せっかく4年生から通っていただいたのに、受験がうまくいかなかった例をご紹介してみます。これから受験生活に入るご家庭に参考にしていただけたらと思います。
ケース1:A君 いつまでも親頼みの勉強を続けたために・・・・・・
いざ受験生活を始めたものの、わが子は一向に勉強の要領を得ません。業を煮やしたおかあさんは、テスト前になると猛特訓をA君に施しました。すると、成績は見る見る上がりました。「やればできるんだ!」――A君がこのように思い、自分から熱心に勉強するようになればよかったのですが、親が手を離すと、すぐに後戻り。そこで、いつの間にかテストのたびにおかあさんが特訓をしなければならなくなってしまいました。
これに似た状況の家庭は少なくないのかもしれません。しかしながら、親が手出しを続けると、いつ手を引くべきか、そのタイミングを見失いがちです。どんな親だって、子どもが6年生になると、4教科とも教えることなどできません。6年生のあるとき、A君は筆者にこんなことを言いました。「先生、ボクは4年生のころ優秀者のニュースに名前が載っていたんだけど、知ってる?」そのとき、「そうか、すごいね。これからも名前が載るようがんばろうね!」と答えたことを思い出します。
しかしながら、A君の名前が再び成績優秀者リストに掲載されることはありませんでした。親に頼らせると、子どもは独り立ちのタイミングを逃します。親の手が及ばなくなったとき、そのことの重要性に気づいても、もはやどうすることもできなくなってしまいます。
ケース2:B君 成績だけで親が安心してしまった?
B君は、とても頭のよい子どもでした。家でさしたる勉強もしないのに、4年生のころはテストでいつもよい成績をあげていました。そんなB君でしたから、家庭での学習計画など全く立てていませんでした。指導担当者がアドバイスしたのですが、耳を傾けてくれません。親御さんも、「塾に勉強について行けているのだから」と、とくに何も言わないまま子ども任せにしていました。
こういう状態で、6年生になってもよい成績を維持し、入試でも結果を出せるお子さんがごくまれにいます。しかし、こういうやり方ではやがてどこかで壁に突き当たってしまいます。家庭で勉強することなしに、人生で成功できるだけの知的能力は身につくはずがないのですから。
B君の行き詰まりは、6年生の応用力養成の段階でやってきました。課題が入試問題のレベルになってくると、基礎の習得段階で筋道立てて考える姿勢を培っていなかったB君は、にわかに行き詰まってしまいました。しかし、B君は途方に暮れるばかり。見かねて親があれこれ言い始めたものだから、親子喧嘩が毎日のように繰り返される事態に陥りました。
このころになって、親御さんからしょっちゅう相談を受けるようになったのですが、入試は近づくばかりで対策らしいことは何もできませんでした。踏んだりけったりの状況のなか、B君の中学入試は終わりました。
日々の過ごし方の中に子どもの真実があります。どういう勉強でこの成績を得たのか。それが大切です。小学生の受験勉強の場合、親が子どもに任せきりでも、手を出し過ぎてもいけません。適切な間合いを計りながら、少しずつ自立した勉強へと向かっていくべきです。