子どもを読書好きにするための親の役割は? ~その2~
12月 3rd, 2009
前回より、親のどのような関わりが子どもの読書活動を活性化させるかを話題に掲げ、ともに考えていただいています。このテーマについては、東京大学大学院教授の秋田喜代美氏が貴重な研究を行っておられます。そこで、秋田先生の著作の参考になる部分をご紹介させていただいています。
前回は、秋田先生が小三、小五、中二計506名を対象に、親が子どもに読書を促すためにどのような働きかけをしたか、それに対して子どもはどのような影響を受けたかを調査されたことまでお伝えしました。
さて、調査の結果わかったのはどのようなことでしょうか。それをご紹介してみましょう。
調査の結果わかったこと
1.親が読書好きであることが、子の読書の自立を促すさまざまな働きかけの量に影響を与える。
親が読書好きであるほど、親自身がよく読書をし、家の蔵書も多く、子どもを図書館や本屋などに頻繁に連れて行き、小さい頃から“読み聞かせ”をしている傾向があります。
2.親が子どもの読書に直接関わる家庭が、子どもを読書好きにする。
家に本がどれだけあるかや、親がどれだけ本を読むかよりも、親が子どもに“読み聞かせ”をしたり、図書館や本屋に連れて行ったりしたほうが、子の読書感情に及ぼす影響は大きいようです。
3.家の蔵書量は、子の読書量に影響力をもつが、子どもの読書感情には影響を及ぼさない。
家にある本の量と読書量には相関関係があります。しかし、子どもを読書好きにする作用はもたないようです。
4.子の加齢が、親の役割の影響力の低下につながるものと、つながらないものとがある。
“読み聞かせ”の影響は、学年とともに小さくなりますが、図書館・本屋につれて行く役割の影響度は変化しません。
秋田先生の調査結果から、どのようなことがわかるでしょうか。まず言えるのは、親が本好きなら自然と子どもも本を好きになるのではなく、本の好きな親は子どもの読書活動を促すような働きかけをたくさんする傾向があり、その結果子どもが本を好きになっているということです。
また、小さい頃から“読み聞かせ”をしたり、図書館や本屋に頻繁に連れて行ったりすることは、単に子どもを読書好きにするだけでなく、「読書とはどのようにするものか」を具体的に教え、自立した読書活動ができるよう子どもを導くという効果を発揮しています。このことは、小さいお子さんや、小学校低~中学年のお子さんをおもちのおかあさんには、大変参考になる話だと思います。
この調査結果をみて、筆書自身大いに反省させられることがあります。愚息がまだ小さい頃から、たくさんの児童図書を買い集めました。やがて、児童書はいくつもの本棚に分けて収納しなければならないほどたまりました。それだけで、安心してしまったのです。「これだけあるのだから、子どもは自分の好きな本を見つけて読むだろう」と思い込んでしまったのです。また、両親ともに読書は好きでした。そこで、「親が本を読んでいるのだから、子どももいずれ本を読むようになるだろう」と、高をくくっていたように思います。
ところがあにはからんや、愚息は一向に本に興味を示すことはありませんでした。そうこうしているうちに、中学受験の勉強を始めることになり、「もっと本を読みなさい」と助言をしないままに、子どもを読書好きにするチャンスを逸してしまいました。そのことと、愚息が国語を苦手にしてしまったことは、無関係であろうはずがありません。おかあさんがたには、是非ともわが子が本に親しむ人間になるよう、いろいろ工夫し働きかけてみていただきたいと思います。
最後に、4つめの調査結果について述べさせていただきます。親子で本屋に行ったり、図書館に通ったりすることが、子どもが中学生になってからも読書活動に影響力をもつということについて。中学生というのは、親子関係において難しい時期です。読書活動を通じて、親子の断絶を防止できるとしたら、すばらしいことではないでしょうか。
また、小さい頃から親子で本屋や図書館に出かけたことは、子どもを単に読書好きな人間に育てるという効果をもたらすだけではないと思います。親子で共有する思い出として、いつまでも脳裏に残るのではないでしょうか。親子いっしょの読書活動は、そういう意味においても価値があると思います。
おかあさんがたは、わが子の読書活動の活性化にあたり、いろいろな試みをされていると思います。今回ご紹介した調査結果から、何らかのヒントが見つかったなら、それも是非試してみていただきたいと存じます。