親は子育てで成長する
12月 24th, 2009
12月16日には、午前中は新4年生の保護者を対象とした行事、午後には入試を間近に控えた6年生の保護者対象の行事がありました。筆者は広報業務を担当しているということもあり、両方の行事でお話しさせていただきました。平日だったせいか、いずれの行事も参加者のほとんどはおかあさんでした。
同じ日に、「これから受験生活に入るお子さんのおかあさん」と、「もうすぐ入試を迎えるお子さんのおかあさん」の集団にお会いすることは滅多にありません。両者の雰囲気の違いに驚くとともに、ある種の感動のようなものを覚えました。
新4年生のおかあさんは、初々しい新米の「受験生の母親」です。これから情報を収集し、受験生活の見通しを立てようと熱心に話を聞いてくださいました。聞き手が熱心で一生懸命であれば、当然話をする側にも熱が入ります。「どのご家庭においても、実り多い受験生活が実現しますように」と願いながらお話しさせていただきました。
一方、もうすぐ受験生活が終わるお子さんのおかあさんは、様々な受験生活の局面を乗り越えてこられた方々です。「とうとうここまで来たのだ」という感慨もあるでしょう。「最後まで油断をしてはいけない」という引き締まった緊張感もあるでしょう。会場の教室には、ひとことで言い表せない独特の雰囲気が漂っていました。おかあさんがた一人ひとりの表情を拝見していると、「わが子の受験生活を見守り応援するなかで、おかあさんがたも親として随分成長されるのだ」ということを痛感せずにはいられませんでした。
中学受験は12歳の子どもの受験です。高校や大学への受験と違って、何かにつけ頼りない小学生が受験生ですから、親の苦労は並大抵のものではありません。最初から最後まで順調に勉強を積み重ね、何の問題もなく受験を通過する子どもなど一人もいないと言ってよいほどです。ですから、わが子に中学受験をさせる親は、例外なく忍耐と辛抱の続く毎日を送ることになるのです。
そんなストレスと闘い乗り越えながら、当日の集まりを迎えたおかあさんがたです。何はさておき、そのことに対し「お疲れさまでした」と申し上げずにはいられませんでした。「中学入試で一番大変なのは、ひょっとしておかあさんかもしれません。思うに任せぬわが子を辛抱強く見守り、今日まで漕ぎつけられるまでには、言葉に尽くせぬご苦労がおありだったでしょう。入試が終わったなら、おとうさんが真っ先に慰労の言葉をかけるべきは、お子さんというよりも、むしろおかあさんではないでしょうか」とお伝えしました。
その話をしていると、すでに何人かのおかあさんが目頭を押さえておられました。それを目にすると、「ここまでのおかあさんがたのご苦労が報われますように」という思いがますます募ってきます。筆者は、「受験直前の親の心得」についてお話しする役目を仰せつかってその場に立っていたのですが、気がつけば無我夢中でおかあさんがたを激励していました。筆者が目にした様々な受験模様、親子間のできごと、指導担当者として嬉しかったことや後悔したことなど、予定外のことまでたくさんお話ししてしまいました。
ふと時計を見ると、予定の時間が近づいています。お話ししたいことも、概ねお伝えしていました。「今日の話が、少しでもお役に立てばいいが」と念じつつ、終わらせていただきました。
ところが、6年部の指導担当者の締めの挨拶を聞いて驚きました。「3時10分に終了するはずの催しが、3時半となりました」と語っているではありませんか。何と、筆者は20分も時間を超過してお話ししていたのでした。「みなさん、貴重な時間をすみませんでした」と、平謝りです。
散会の前、改めておかあさんがたの表情を拝見すると、どなたも「入試に向けて、親としてできる精いっぱいを尽くそう」「悔いの残らぬ受験にしよう」という静かな決意が伝わってくるよい表情をしておられます。
思えばずいぶん前、筆者も愚息の中学受験を経験しています。立派な結果を残したわけではありませんが、彼なりに頑張ったのだと思っています。それがよい経験となっていると感じることも少なくありません。また、親としても夢を見させてもらいました。愚息を少しでも頑張らせようと、様々な声かけや試みもしました。そのほとんどは、効果のないものだったかも知れません。しかし、親としての貴重な体験をしたと思っています。
これから入試終了までは、まだまだいろいろなことがあるでしょう。受験生をおもちのどのご家庭におかれては、最後まで気を緩めず、お子さんの入試終了まで応援してあげてください。すべての受験生家庭で、悔いなき受験が達成されますように!