中学受験が与えてくれる宝物 ~その1~
1月 12th, 2010
「私立や国立の中高一貫校に関心はあるが、『中学受験は大変だ』といううわさも耳にする。わが子にさせるべきものかどうか迷っている」という人はおられませんか? 中学受験は、成長期にある子どもの受験です。子どもに過重な負担をかけたり、子どもの成長に歪みを生じさせたりしないよう配慮しなければなりません。しかしその反面、わが子の可能性を拡げるすばらしい体験の場にすることもできるのです。そのことについて、以前書いた原稿がありますので、若干手直ししてご紹介してみます。
1)先々の知性開花を支える、“よき学習習慣”が身につく。
昔から、習慣は一生を支える重要なものだと言われます。まさによき習慣こそ人生における宝物なのです。学力形成の道筋を考える際にも、習慣の重要性を認識せざるを得ません。
大がかりな調査によると、中・高生の何割かは家庭で殆ど勉強しないそうですが、こんな生徒だって勉強の大切さはわかっています。しかし、怠け癖が染みついてしまうと、体が動いてくれません。一方、勉強を習慣づけたお子さんは、決めた時間にサッと勉強に取りかかります。繰り返しによって定着した記憶が意識を超えて働くのです。これこそ、習慣がもたらしてくれた恩恵に他なりません。
このように、習慣のよいところは、一旦身につくと苦労が苦労でなくなる点にあります。意志を超え、体が自発的に動いてくれるのです。ただし、このレベルに達するにはそれなりのプロセスが必要です。中学受験対策の勉強は、その役割を果たしてくれるのです。まだ固まらない年齢の子どもが、2年、3年もエネルギーを注ぐのですから、学習の習慣化にこれほどふさわしいものはありません。受験勉強で備えたよき学習習慣は、いつまでもそのお子さんの学習活動を支えてくれることでしょう。
2)学ぶことに対して積極的な姿勢が備わる。
休憩時間に、6年生の男の子数名が机を囲んでいます。「何だろう」と思って近寄ると、算数の問題の解き方・考え方を楽しそうに話し合っていました。このように、自発的に問題解決に向けて行動する子どもは、中学入試に強いだけでなく、先々も学力を伸ばしていくことができます。理由は簡単。自ら知りたいと思い、率先して学ぶ態度こそ、学力形成におけるいちばんの原動力になるからです。
それにしても、「知りたい、解き明かしたい」という純粋な気持ちから、大人だってわからないような難問に我を忘れて取り組んでいる子どもたちの様子に、感心させられたものでした。
ただし、子どもの学習態度は大人次第でどんなにも変わります。「これぐらいできなければ」「こんなこともわからないのか」といった態度で接すると、勉強を「イヤなもの」としか思わなくなるでしょう。中学受験の課題には、子どもの知的好奇心や探求心を刺激する課題がたくさんあります。それを活かさない手はありません。子どもが「知りたい!」という欲求を漲らせ、率先して取り組む勉強を応援すれば、合格という結果は同じでも、先々までを見通せば遙かに多くの収穫が得られるのです。
3)目標めざして努力するプロセスが、人間を成長させる。
近年の世相で気に掛かることがあります。子どもをその場限りの快楽に引き込むものが溢れている一方、子どもが本気になって取り組み、達成感を得られるものが少ないように思います。何事につけ淡泊で無気力な子どもの増加は、子どもが変わったというより、子どもを取り巻く環境の変化に大人が気づかず、然るべき対処をしていないからなのかも知れません。
中学受験への挑戦は、こうした時代にあって、子どもの大いなる成長を引き出してくれるものの一つです。無論、スポーツでも芸術方面でも構いません。中学受験についていえば、合格の夢を実現させるために全力でぶつかる体験は、子どもの自己鍛錬につながるとともに、自己の可能性を発見し、自信を植えつけてくれるという点において、メリットは他では得られないほど大きいと言えるでしょう。①や②の収穫と連動させ、わが子の精一杯のチャレンジを応援してやれば、お子さんは「人間としての成長」という、「合格」とは別の掛け替えのないものをきっと手にされることでしょう。