中学入試のシーズンがやってきました
1月 15th, 2010
早いもので、今年も中学入試シーズンが到来しました。昨年は新型インフルエンザが猛威を振るい、ここに至るまでには、受験する側もお子さんを受け入れる側も対策に追われる状況を余儀なくされました。
どのご家庭でも、親御さんはわが子が罹患しないよう毎日のケアに余念がなかったことでしょう。その期間も半年に及ぶ長さであり、本当に大変だったと思います。また学校の先生方も、「もしも罹患者が急増するなかで入試を行わざるを得なくなったなら、どう対処すべきか」ということを考えなければならず、様々なシミュレーションをするなど、随分苦慮されたことと思います。
幸い、インフルの罹患者数は峠を越した感がありますが、全ての日程が終了するまでは安心できません。親御さんにおかれては、最後の最後までくれぐれもお子さんの体調管理にはお気をつけください。
さて、受験を目前にすると、受験生のお子さんはもとより、親も平常心を保つのは難しくなるものです。親御さんにお願いしたいのは、「今からは、わが子の精神面のケアと健康管理に徹する」ということです。
受験勉強には、「もうこれでよし」などということはありません。第一志望校に十分合格できるだけの学力をとうに備えているお子さんだって、「この学校に行きたい」という思いがあれば、当然不安が頭をよぎります。
ですから、入試に向けた見通しに関する不安を親が口にするのは望ましくありません。親御さんにお願いしたいのは、「今まで学んで培ってきた力を出し切ればいいのだ」と励まし、「全力を尽くせばいいんだよ。そして、自分を受け入れてくれた学校に行けばいいんだ」など、子どもの入試に臨む気持ちをしっかりとさせるための激励をしていただくことです。
無論、「是非ともあの学校に」という親の願いはあることでしょう。しかし、それを言ってもお子さんの不安を助長するだけです。今やお子さんは親以上に「あの学校に行きたい」という気持ちを強くもっているのですから。
ずいぶん前のことです。筆者がまだ若かった頃、入試会場でお子さんを励ましたときにちょっとしたできごとがありました。入試会場で、自分の担当クラスのお子さんを目に留めました。その日は、そのお子さんの第一志望校の入試でした。
「何らかの激励の言葉を」と思い、そのお子さんに「落ち着いていこう。普段通りの力を出せればいいんだからね」と、声をかけました。すると、思いがけない言葉をその子が投げ返してきました。
「先生、普段通りの力じゃ、ここは受からないよ!」――この言葉にハッとなりました。そのお子さんは、本番を目の前にした緊張と闘いながら、自分なりに「どうしたらこの学校に受かるだろうか」と、必死に思いを巡らせていたのです。自分の思いの至らなさに恥じ入るとともに、「この子の願いが叶いますように」と心から念じたものでした。
どの学習塾もそうですが、指導担当者は入試会場へ出向き、担当クラスのお子さんの緊張を和らげたり、気持ちに活を入れるべく激励したりします。子どもたちは、指導担当者のもとに集まったり、友だちと一塊りになったりし、そこで会話を交わしながら少しずつ緊張をほぐしていきます。
「先生、緊張してきた」と言ってきたお子さんのほうを見ると、まさに顔面蒼白といった状態。まだまだあどけなさの残るその表情が、緊張で引きつらんばかりの様子です。それを見て、「こんな子たちが受験に挑戦しなければならないのか」と、中学受験というもののむごたらしさを思わずにいられなかったこともありました。
しかしながら、毎年子どもたちはそういう試練に出くわしながら、みんな逞しく乗り越えていきます。受験の結果は様々でしょうが、それぞれに自分の精いっぱいを尽くし、成長しているのです。
先ほどの「普段通りの力じゃ受からないよ」と言ったお子さんは、見事その私学に受かりました。緊張で顔面蒼白となっていたお子さんもちゃんと受かっていました。かつて、40度の熱を押して保健室受験をしたお子さんもいましたが、それでもちゃんとその志望校に受かりました。
大人が心配するには及びません。入試の頃には子どもなりにいろいろ考え、思いを定めているのです。大人があれこれ心配をし、よけいなことを言う必要はないのです。子どもって、本当にすばらしい成長力をもっています。
今年も、すべてのお子さんが、中学入試を人生のよきチャレンジの場とし、逞しく乗り越えていくことを心より念じています。