睡眠と子どもの脳の成長
1月 25th, 2010
前回は、睡眠時間と子どもの成績に相関関係があるという調査結果をもとに、睡眠が人間の記憶と深く関わっていることについてご紹介してみました。今回はこれに関連し、睡眠が子どもの脳の成長にどのような関わりをもっているのかについて、専門家の著述を交えてお伝えしてみようと思います。
さて、前回は睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」とがあるということを書きました。最近はテレビの科学番組やクイズ番組などで、「レム睡眠」が取り上げているのを見ることがあります。すでに知っているかたも少なくないと思います。
眠りの状態が浅い「レム睡眠」と、眠りの深い状態の「ノンレム睡眠」は、交互に繰り返されます。人間が眠りにつくと、まずレム睡眠の状態になり、それから徐々にノンレム睡眠へと移ります。この周期はだいたい90分ほどだそうです。
このことから、1日7時間くらい睡眠時間をとる人の場合、レム睡眠とノンレム睡眠の周期は4~5回くらい繰り返されるということになるでしょう。この繰り返しは、子どもの脳の成長にとって重要な意味をもっているそうです。以下は、ある脳の研究者の著書の一部を引用したものです。
睡眠の最初の三時間の中に最も深い眠りが含まれています。いわゆる熟睡です。その後の睡眠では、浅い段階のノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返されていきます。最初の深い眠り、すなわち深い段階のノンレム睡眠は、大脳の回復あるいは修復にとって大切なものであり、この時に成長ホルモンが分泌されます。したがって、入眠からの三時間は、子どもの体の成長にとってとくに大切な時間といえます。この時の睡眠が邪魔されないように気をつけなければなりません。
これに対し、レム睡眠は大脳の情報整理あるいは定着に大切だと考えられています。レム睡眠では、脳は覚醒に近い状態にあります。眠りのこの状態にあるとき、起きて活動していた折りに学習された情報の整理整頓が行われるのです。睡眠中のノンレム睡眠とレム睡眠の占める割合は、子どもと成人では異なっており、発達的に子どもの方がレム睡眠の占める割合が大きいことがわかっています。新生児や乳児のレム睡眠の割合はほぼ50%ですが、大人になると20~25%くらいになります。
生活習慣や生活のリズムは、睡眠にも大きな影響を及ぼします。昼間に活動的な過ごし方をしていると、夜の睡眠は深くて連続しますが、昼間のんべんだらりと活性化しない過ごし方をしていると、夜の睡眠は浅くて途切れがちになるそうです。
これは、脳が過去の睡眠の多い少ないを算出し、睡眠の質や量を決定する機能をもっているからです。ですから、起きている時間に活発に体を動かしていれば、脳はおのずと体を守ろうとします。そこで、夜の就寝中は深い眠りを維持できるというわけです。やはり、生活はメリハリやリズムが大切なのですね。
朝、決まった時間になったらパッと起床する。学校では頭と体をしっかりと動かす。家に帰ったら、遊びと勉強、生活に必要な時間をてきぱきと切り替え、一定の時間になったらサッと眠りにつく。そういう生活が何をするにつけても集中力を生み出し、よい結果を引き出すのだと思います。
なお、先ほどの「ノンレム睡眠をしているときに成長ホルモンが分泌される」という話についてですが、「それなら、夜眠っていないときには成長ホルモンは分泌されないのか」という疑問をもつ人もおありであろうと思います。実際そのとおりで、眠らないと成長ホルモンは分泌されません。これは、子どもの体の成育にとってゆゆしきことです。
ただし、その場合、翌日の日中に成長ホルモンが分泌されるのだそうです。このことは、大人を対象とした研究でわかったことであり、それが子どもに適用できるのかどうかはわかりません。すくなくとも、人間の生活リズムの観点から考えるなら、子どもの体の成育に及ぼす悪影響は何らかの形であるのではないかという懸念を、多くの人がもつのではないかと思います。