日本の親は子どもに「価値観」を教えているか ~その1~
2月 15th, 2010
何年か前、大学の先生が中心となって実施した、中高生の規範意識に関する国際比較調査の結果をまとめた本が目に留まり、買い求めたことがあります。
そこに示されていた日本の若者たちの現実に、衝撃を受けることになりました。今回は、この本に掲載された調査データをもとに、子育ての望ましい方向について考えてみたいと思います。
まず、「子どもから見た、親からの働きかけ」に関する調査データから。子どもから見て、親が叱ったり教えたりするなど、「口出し」をしてくるかどうか、何かにつけ自分に「相談」してくるかどうか、「我慢」をすることの大切さを教えようとしているかどうか、についての子どもの意識結果をご紹介してみます。
なお、調査年は2001年から2002年にかけてで、対象はアメリカとトルコと日本の中学高校生約2500人、そしてその父親と母親約3300人です。ご存知のように、アメリカは個人主義の国で、「子どもを早くから自立させよう」とする子育て傾向の強い国です。一方、トルコは集団主義的色彩の強い国で、かつての日本のように貧しい国です。この二国と親子関係と、経済的な発展とともに急速に家族制度や家庭環境が変貌しつつある日本の親子関係との比較から、何がわかるでしょうか。
最初に、子どもから見て親が何かと教えてきたり、叱ってきたりするなど、「口出しをしてくるかどうか」についての調査結果をみてみましょう。グラフは、子どもが「そうである」「かなりそうである」と答えた割合を合わせたものです(以下共通)。
アメリカやトルコの親は、父親も母親も50数%~80%近くが子どもに対して働きかけているのに対し、日本の父親は、わずか24%あまりです。また、日本のおかあさんは比較的子どもに対して口出しをしていますが、母親だけの比較で見ると、参加国中でいちばん低い数値を示しています。
学者によると、日本の母親は子どもとの摩擦を回避しようとする傾向があるようです。「いろいろ口出しをしなくても、子どもはわかってくれる」と思えるだけの信頼関係がそこにあれば問題ないのかもしれません。しかし、調査にあたった先生は、「日本の現状を考えたとき、『子どもは親の意向を察して、結局は親に従うだろう』と考えるのは、親の甘えである」と指摘しておられました。
二番目の「私に相談してくるかどうか」についての調査結果をみると、父親も母親もダントツでアメリカが多いということがわかりました。これは、アメリカの家庭が「子どもに相談する」という形で子どもを大人のように扱い、子どもの自発性を引き出そうという傾向が強いためであろうと思われます。一方の日本は、トルコと比較してもその割合が低く、父親に至っては3%未満に過ぎません。
なお、日本の母親は男子よりも女子に多く相談しているという結果も出ています。そうなると、男子にとって家庭で相談相手になる存在がほとんどいないことになります。問題はないのでしょうか。
次に、「我慢を教えるかどうか」ですが、アメリカの親もトルコの親も父母ともに8割前後が「教える」という結果を示しています。それに対し、日本の親は父親が4割強、母親が5割強でした。この結果は、わが国の親は他国と比べて我慢することを熱心に教えていないということを示していると思います。なお、日本では父親が息子に、母親が娘に我慢の大切さを教える傾向が強いそうです。
次回は、この結果をどう見るべきかについてともに考えてみたいと思います。