“リビング学習”は日本人家庭に向いている?
3月 15th, 2010
子どもの家庭勉強の場所は、どこがふさわしいでしょうか。おたくでは、お子さんは毎日どこで勉強されていますか? 最近、テレビを見ていたら、“リビング学習のすすめ”といったようなタイトル字幕が映しだされ、「リビングルームで子どもに勉強させましょう」などという呼びかけが流れているのを耳にしました。何かの宣伝なのか、テレビ番組の特集なのかはわかりません。
「子どもの勉強は個室ではなく、リビングやお茶の間などのような、親から見えるところでさせたほうがよい」などということは、ずいぶん前から言われています。特に小学校の低学年から中学年までの子どもは、親が見ていてくれたり、励ましてくれたり、誉めてくれたりすることがおおいに励みになります。時間を置いてから誉められるよりも、がんばっている今そのときに声をかけられたほうが、子どもはうれしいのです。
昔と違い、わが国でも最近は洋風の作りの家がほとんどです。また、マンションにお住まいのかたもたくさんいらっしゃいます。そういうご家庭のほとんどは、LDKと個室で成り立っており、食事や団欒の時間以外、お子さんは個室で過ごすことが多いのではないかと思います。
そういう家で子どものなすがままにさせてしまうと、大きくなるにしたがって個室にこもる時間が増え、自分の好きなことばかりに時間を費やすようになりがちです。まかり間違って、子どもの部屋にテレビなどを置いてしまうと、まず勉強など目もくれなくなってしまいます。そこで、「子どもが思春期になるまでは個室を与えるな」と言う人は少なくありません。
ある脳科学者の著作に、このLDK式の家屋が日本人家庭に合うかどうかに関する著述がありました。それを読んでみると、やはり個室は日本家庭の子育てにはまずい面が多いといった趣旨のことが書かれていました。以下は、その本に書かれていたことをかいつまんで説明したものです。
個室で子どもが時間を多く過ごすと、仮に勉強をしたとしても社会性が育たないし、人間関係は学べない。そうなると、自我や社会性を司る前頭連合野が成熟できない。だから、小学生に個室を与えるのは好ましくない。私たち(モンゴロイド)は、子どもと密着したつながりを大事にすることで、時間をかけてゆっくりと育てる方法を選んで進化してきた。子どもに個室を与えるのは、それに逆行する行為に他ならない。
欧米人(コーカソイド)は、モンゴロイドよりも、もともと自立心が旺盛であるという特徴をもつ。欧米には、赤ん坊のころから子どもを子ども部屋で寝かせる習慣があるが、親と別々で寝るから自立心が育つのではなく、子ども自体が自立しようとする傾向をもっているから、それが可能なだけだ。個室を与えることで自立が促進されているわけではない。
この本の著者が、アメリカの知人の家を訪れたとき、その家では全員がリビングにいて、子どもも大人と同じように来客者に挨拶をし、あとはそのままリビングで過ごしていたそうです。親も、「自分の部屋にいなさい」などとは言いません。それでいて、子どもは大人の話には加わらず、子どもたちだけで遊んでいたそうです。
こういう家庭はどうやら成功例らしく、アメリカの家庭でも子どもを個室で自由に過ごさせることがマイナス作用を起こし、子育てに失敗するケースが多いそうです。親子の対話が必要なのは、いずれの国でも同じなのですね。最近では、アメリカでも「リビングを広くとって家族といっしょに過ごす時間を増やそう」などと言われているということが紹介されていました。
以上から、ただ「リビングで勉強したほうが学習成果の面でよい」ということだけでなく、子どもと親が近くにいて、コミュニケーションをいつでもとれる状態で過ごすことが、日本人の子育ての歴史に符合するもので、子どもの成長にとっても望ましいということのようです。
余談ですが、何年か前、東京大学の学生に「子どものころどこで勉強したか」という調査をしたところ、一番多かった答えが「茶の間やリビング」だったそうです。
小学生のお子さん、特に低~中学年のお子さんをおもちのご家庭にとってこの話は参考になることと思います。親子が同じ空間で過ごす。子どもが勉強しているときには、テレビなどはなるべく消して環境を落ち着いた雰囲気に整えてやる。そして、ときどき声をかけてやり、がんばっているようならタイミングよくほめてやる。
どうでしょう。「それなら、今のわが家の環境と同じだ」というかたも多いことでしょう。「今の状態でいいんだ」と、自信をもって続けてください。