気になる日本の親子の関係  ~その2~

3月 26th, 2010

 今日は、前回ご紹介した国際比較調査の結果について、検証してみたいと思います。また、それを受け、中学受験生の親御さんに対して何らかのアドバイスになることが見出せたなら、それを書いてみたいと思います。

 前回、次の三つの事項に対するアメリカ、トルコ、日本の中高生の回答をご紹介しました。

  1. 1.親を尊敬する
  2. 2.親のようになりたい
  3. 3.親は私に期待していると思う

 これらについて、「そうである」「かなりそうである」と答えた子どもの割合をグラフにしたところ、いずれの事項も、父親母親ともに日本が図抜けて最低数値を示していました(詳しくは、前回の記事を参照ください)。

 心理学用語に「モデリング」という言葉がありますが、小学生までの子どもは、立ち居振る舞いを始め、何につけても目の前にいる親のやることを見て学ぶと言われています。それなのに、手本たる親を尊敬することができない子ども、親のようになりたくないと思う子どもが多いのはどうしたことでしょうか。

 原因を考えるうえで、ヒントになるのは89年に実施された同様の調査の結果です。「親のようになりたい」と答えた子どもは、89年には、父親で23.8%、母親で26.4%でした。注目に値するのは父親で、12年前には5.8%も多く「父親のようになりたい」と思っていたのです。このことを踏まえると、近年の親子関係、とくに父親と子どもの関係に異変が生じているのだとみることもできるでしょう。

 ズバリ言うと、親子が接触する時間の減少、親子の会話時間の減少などが大きな要因ではないかと思います。とくに父親の場合、他のさまざまな資料などにおいても、「しつけの場にいない」「しつけを母親任せにしている」という指摘が多数あります。もっと父親は、子どもと向き合い、子どもと語り合い、子どもと生活をともにすべきではないでしょうか。そこから、親の価値観を子どもに伝える機会がたくさん生まれてくることでしょう。

 他の調査でわかったこととして、父親よりも母親のほうが子どもに対してより多く接触時間を持ち、たくさんの働きかけをしているということがありました。これについては、三つの国いずれも共通でした。しかしながら、日本だけ極端に「父親を尊敬する」「父親のようになりたい」という回答が少ないのは残念なことです。おそらくは、子どもとの接触時間や子どもへの働きかけが、日本の父親の場合、アメリカやトルコと比較して極端に少ないのではないかと思われます。

 関連する調査によると、トルコの子どもは父親を怖いと感じているそうです。それでいて、父親を尊敬する子どもが97.5%います。問題は、子どもにとって怖いかどうかではなく、いかにして子どもに接触する時間を設け、子どもとコミュニケーションを図るか。それが日本のおとうさん方の大きな課題であることは間違いありません。

 さて、三つ目の質問について。このブログを、継続的にお読みいただいているかたはご存知であろうと思いますが、「子どもが親に期待されていると思うかどうか」は、学習意欲に決定的な影響を及ぼします。子どもが精神的に自立し、親離れした中高生になると、自己目標達成に向けた意欲が学習活動を支える中心的な力となりますが、まだ親頼みで生きている小学生にとって、がんばりの源は「親から寄せられる期待」なのです。

 この「親からの期待」を感じているかどうかについても、アメリカやトルコでは父母ともに9割を超えているというのに、日本では父親が27.4%、母親が36.0%と、極端に低くなっています。

 親からの期待を感じるかどうかは、まさに親子のコミュニケーションの産物です。親が日頃から子どもと話し合う機会を積極的に設け、親が子どもに何を期待しているかを伝えるべきです。以前にも書きましたが、その期待が何か、どういうものかが、子どもの意欲の強さや継続力につながります。たとえば、親が期待するのは「テスト成績」か、「テストに臨むプロセスとしての努力」か、それによって子どものがんばりは違ってきますし、親の期待が納得できるものかどうかは、やがて親への尊敬の気持ちにも影響するようになります。

 様々な子育ての話題を掲げてきましたが、ここでも結局は親子の会話の重要性に行き着いたようですね。
 

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