子どもの健全な自己イメージを築くほめ言葉
4月 5th, 2010
前回は、子どもをほめる場合に子どもの人格的側面を取り上げてほめるのではなく、子どものしたことを指摘してほめる方が望ましいということについてお伝えしました。それが、子どもの自己イメージを形成するうえで確かな手助けとなるからです。
無論、これは筆者の個人的見解ではありません。子どもの教育に関わる多数の専門家が指摘していることを受け、筆者が納得したうえでご紹介したものです。
これから中学受験準備の学習生活が始まるご家庭においては、おそらく「ほめ方・叱り方」について頭を悩ませることは何十回となくあると思います。そのとき、この記事にことを思い起こし、多少なりとも参考にしていただければという思いで書いています。
今回は、どういうほめ方がよいかについて、具体的にシチュエーションを設定して考えてみたいと存じます。なお、今回の設定内容については、アメリカの心理学者(故人)の著著を参考にさせていただきました。
★よいほめ方とはどういうものか、練習してみましょう!
1.子どもがリビングルームをきれいにそうじしてくれました。
<よいほめ方>
<子どもの内面> そうじしてよかった。こんなに喜ばれるなんて。
<悪いほめ方> まあ、いつからこんなにきれい好きになったの。これからは部屋を汚さないでね。
<子どもの内面> おかあさんは、いつも私が部屋を汚すと思ってたんだ。傷つくわ。
2.子どもがサッカーの試合でシュートを決め、チームが1対0で勝ちました。
<よいほめ方>
<子どもの内面> 僕がチームに貢献できたことをおとうさんは喜んでくれている。がんばってよかった。
<悪いほめ方> すごいぞ、よくやった! これでおまえはチームのエースだ!
<子どもの心理> 今日はたまたま得点しただけさ。いつもは失敗してる。エースだなんてとんでもない。
3.間違って小遣いを多くもらっていたことを、子どもが報告してきました。
<よいほめ方>
<子どもの内面> 正直に親に言ってよかった。
<悪いほめ方> なんて正直な子なの! そう言えば、あなたってウソをついたことがないわね。
<子どもの内面> 僕はおかあさんにときどきウソをついてるよ。なんだか気が重くなった。
4.子どもが入院中のおばあちゃんに見舞いの手紙を書きました。
<よいほめ方>
<子どもの内面> うまく書けそうもないと思ったけど、書いてよかったな。
<悪いほめ方> 下手でも書いただけましね。
<子どもの内面> どうせ下手さ。手紙なんて書くんじゃなかった。
5.苦手な算数をなんとかしなければと、この1週間がんばりました。
<よいほめ方>
<子どもの内面> おかあさんがあんなに喜んでくれるなんて。もっとがんばってみよう。
<悪いほめ方> あら、めずらしくがんばっているわね。このがんばりが続くといいわね。
<子どもの内面> なんか皮肉っぽい言い方だな。どうせ長続きしないと思ってるんだろ。
今回の記事のアイデアをお借りした心理療法の専門家は、行為を取りあげて子どもをほめるということについて、次のように述べています。
事実を語り、子どもがそこから明確な結論を引き出すというプロセスは、精神の健康をつくり出す積み木のようなものです。子どもは、私たちのことばから、自分についての結論を引き出すと、それを再び心のなかでくりかえしてみるのです。こうして、ありのままに事実について言われたことを、心のなかでくりかえすことによって、子どもは、自分自身および自分の周囲についての評価を、ほぼ定めていくのです。
子どもの行為を名指ししてほめるということが、子どもの健全な成長に大きく寄与することがおわかりいただけたと思います。親が子どものすることに対してどう反応してやるべきか、どうほめてやるべきか、迷いを感じておられた方に参考にしていただければ幸いです。
<よいほめ方の一例>
1.まあ、きれいにそうじしてくれたのね。ありがとう。部屋がきれいだとやっぱり気持ちいいね。
2.チームの勝利に貢献できてよかったね。すばらしいシュートだったよ。
3.あら、よけいに渡していたんだね。教えてくれてありがとう。
4.心のこもった手紙を書いてくれたね。おばあちゃん、きっと喜ぶよ。
5.苦手な算数をよく取り組んでいるわね。おかあさんも応援しているからね。