競争原理に飲み込まれない子どもにする ~その2~
4月 19th, 2010
前回は、中学受験と私学進学のネガティブな側面にスポットを当て、競争原理の強い環境で埋没しないための配慮の必要性について書きました。これに関して補足したい点がありますので、引き続き同じテーマに基づいて書いてみます。
わが子が中学受験に挑戦する以上、親は「合格させてやりたい」と強く願うのが人情です。しかし、すでに何度も書きましたが、「合格後」「受験後」のわが子のさらなる成長を見通し、人間としての健全性を失わないよう配慮することも、親として忘れてはならないことだと思います。
最近、よく「人間力」という言葉を耳にします。単に知識や学力といった尺度において優秀であるだけでなく、困難を乗り越えたり、人とのコミュニケーションを上手にとったり、自分の責任をしっかりと果たしたりするなど、今日の社会を逞しく生き抜ける能力のことであろうと思います。「こうした人間力を培いながら、わが子が中学受験を突破できないものか」とお考えになるおとうさんおかあさんは少なくないでしょう。
この人間力は、中学入試の助走路としての受験生活をどう位置づけ、どのように乗り切るかによって、育ちもすれば失うこともあるように思います。では、親はどうわが子の中学受験に関われば、わが子の人間力を育てながら中学入試を突破することができるのでしょうか。
私たち家庭学習研究社は、すでに40年以上前からこのことへの答えを有し、学習指導に反映させています。また、そのことが学習塾として今日まで生き残ってこられたいちばんの理由であろうと自負しています。どういうことかご説明してみましょう。
答えはシンプルかつ明確です。中学受験勉強を通じて子どもを自立させるということです。すなわち、大人が手を差しのべて合格する受験ではなく、子どもが「自学自習」の姿勢を培いながら、自ら築いた学力によって中学入試を突破できるようにするということです。こうした方針については、このブログを開設した当初から、言葉こそ違え何度も書いてきました。
私たちは、親御さんに「お子さんの勉強に手を貸す必要はありません」「なるべくお子さんに教えないでください」と申し上げています。
大人頼みの勉強で合格しても、中学生になってからはそうはいきません。その点、自学自習による勉強を通じて合格した子どもは、ハイレベルな教育環境に順応し、自分で自分を伸ばしていく自己教育力を携えています。また、「やればできる」という自分への信頼の気持ちをもっています。たとえ壁にぶつかったとしても、へこたれたりあきらめたりすることはありません。
ただし、小学生が自学自習を実現するにあたっては、学習環境を設定する家庭と学習塾が同じ視点に立ち、連携していく必要があります。いくら塾が「自学自習」を謳っても、指導の現場に立つ先生が子どもの自律的な学習姿勢を後押ししなければ意味がありません。また、学習方法について塾の先生がきちんと指導したとしても、教材が子どもの一人勉強に適していなかったなら、「自学自習」は絵に描いた餅に過ぎなくなってしまいます。さらには、家庭で親が教えたり指示を出したりしたのでは、塾でどんな指導を受けようと子どもの自立勉強はいつまで経っても実現しないでしょう。
親は、子どもがきちんと取り組んでいないと黙っていられなくなるものです。また、とりあえずのテスト範囲を親がみてやれば、成績をあげることもできます。こうした誘惑に勝ち、子どもの学習の自立を応援するのは辛抱のいることです。しかしながら、子どもの自立学習が少しずつ進展し、やがて親の心配など要らないほどしっかりとした勉強ができるようになったとき、親がかりの勉強では見込めない大きな可能性が見えてくるのです。
さて、ここまで書いてきたものの、親に必要な親のサポートとしてもう少し具体的にお伝えする必要があるように思えてきました。そこで、次回は次のような流れで子どもの自立学習を支援するための方法をご説明してみようと思います。よろしかったら、次回も記事も是非お読みください。
★中学受験で必要な親の応援と関わり
1) 勉強の割り振りを子どもと一緒に考える
2) 子どものすることを信頼して見守る
3) 子どもの実行力を引き出す
4) 子どもに自信を植えつける