子どものイメージング力をどう育てるか ~その1~

5月 10th, 2010

 前回は、言葉からイメージを起こす力、すなわちイメージング力が国語力、ひいては学力全般に大きく関わっているということについて書きました。

 今回は、引き続きこの話題を取り上げ、「子どものイメージング力を育てるにはどうしたらよいか」について話を進めてみたいと思います。

 この春、このイメージング力をテーマにした講演会が関西の某都市で行われました。筆者はたまたま講演者と面識があり、聴講させていただきました。講演者は、劇作家であり、小学生を対象とした学習塾を主宰し、なおかつ、大手学習塾が多数採用している中学受験の算数テキストの執筆もされているという、多芸多才な女性です。

 この講演の内容は、小学生や幼児をおもちのおかあさんがたの家庭教育に大変参考になる話であり、ちょっとその一部をご紹介してみたいと思います。なお、メモをもとにまとめましたので、講演者の言葉そのままではないことを予めおことわりしておきます。

 子どものイメージング力を育てるには、家庭での会話で(特に9歳頃までが勝負)親が気をつけるべきことがあります。それは、日常の何気ない場面で意識してイメージングにつながる言葉を用いることです。

 気持ちのいい朝です。日ざしが心地よく窓越しに差し込んできます。そんなとき、お子さんに「今朝は、やわらかな日ざしが差してくるわ」と言ったとしましょう。親の使っている言葉は、みな子どもの脳にメモリーされていきます。朝のやわらかな日ざしがどういうものか、具体的状況と一緒に脳に刻み込まれていきます。こういうことが繰り返されたなら、おそらく子どもは言葉に対する感性が豊かで、イメージング力に優れた人間に成長できることでしょう。

 一方、おかあさんが「やべえ」と言ったら、お子さんは、その言葉の使用法を例示して教えたことになり、すぐにお子さんは自分で使うようになります。それは歓迎すべきことではありませんね。

 爽やかな青年、厳かな式、こんな言葉を日常で使っていたなら、それを使った状況とともに子どもは脳にインプットすることができます。ところが、「厳かな」という言葉を、具体的場面とともに聞く機会をもたなかったなら、子どもはいつまでもその言葉を使えるようにはなれないことでしょう。一方、親が実際に使ってみせれば、子どもはすぐに自分で使えるようになります。

 これから先、子どもがどんな分野に進んでも必要となる力とはどういうものでしょうか。それは、言葉の力(語彙力)と、イメージングの力です。そして、それらはおかあさんを通じて子どもに身につけさせることができるものです。

 授業で「一面の冬景色」という言葉を使ったとき、「先生、その一面とは一辺が何センチですか?」と質問した子どもがいました。驚きました。「角を曲がると、牛が出てきてめんくらった」という文の「めんくらう」の意味を選択肢で答えさせたところ、「めん(麺)を食らう」を選んだ子どもがたくさんいました。

 こういう間違いは、頭の良し悪しとは無関係です。早くからテスト問題にばかりあたらせていると、文章の前後をちょっと読んで答えを考えたり、似たような問題を解いた経験に反応したりするクセがつき、それが仇になっているのです。パターンで対応するのではなく、流れ全体のイメージを捉えながら、部分の言葉の意味を味わい捉える力をつけるべきだったのではないでしょうか。

 いかがでしょうか。前回、弊社の入会試験を何回受けても受からなかったお子さんのことを書きましたが、今ご紹介した講演内容からも、イメージングの力を育てていなかったからだということが、おわかりいただけたのではないでしょうか。そして、子どものイメージングに力は、おかあさんの家庭教育によって育てることができるという点について、もっと知りたいと思われたかたもおありでしょう。そこで、次回も引き続き講演の内容をご紹介してみたいと思います。

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