実物体験が“生きる力”を育む

7月 20th, 2010

 前回は、「夏休みは自然体験を子どもにさせる絶好の機会です」といった趣旨の記事を書きました。夏休みが近づいたせいでしょうか。テレビ番組を見ていると、識者が「日本人は実体験の伴わない知識に偏りすぎている。日本の子どもには、机上で知識を増やすことだけでなく、外に出て活動し、実物にふれる体験をもっとさせるべきだ」というようなことを語っているのを目にしました。

 また、ニューズウィーク日本版では、「子どもの頃の体験は、一生の宝物」というタイトルで特集記事が組まれていました。ちょっとその一部をご紹介してみましょう。

 子どものときに、豊かな自然を体験したり、子ども同士でたくさん遊んだ経験のある人ほど、学歴が高く、年収も多い――そんな調査結果が先日発表された。

 独立行政法人 国立青少年教育振興機構の「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」の中間報告によると、子どものころの体験が豊富な人ほど、大人になってからの意欲や関心、規範意識が高い傾向があるという。さまざまな体験によって探求心や知的好奇心が刺激され、学習意欲が向上するのではないか。専門家からはそんな指摘がある。

子ども時代に自然体験をした人の大人になってからの意欲関心

 とすると、やっぱり夏休みには普段できないことをさせてあげたい。実際に体験した子どもとそうでない子どもとで大きく差が出る教科は理科だそうだ。カブトムシを捕りに行ったり、カエルをつかまえたり、満天の星空を眺めたり・・・・・・。自然を肌で感じる機会をつくってあげよう。それが、ひいては学校の勉強を支える好奇心や意欲のもととなるのだから。

 最近は、小学生の理科だけに特化した学習塾があったり、理科専門の通信教育があったりするそうです。普段の生活では、なかなか自然に親しむ経験はできませんから、これも一つの方法なのかも知れませんね。

 そう言えば、ずいぶん前のことですが、息子さんに徹底した自然観察をさせたおとうさんがおられ、その結果息子さんが東大医学部に進学されたという話があります。

 そのおとうさんは、近所の川や動物園に息子さんを連れて行き、自然や動物を徹底的に観察させ、その体験から様々なことを学ばせたのです。たとえば川に連れて行った場合でも、ただ漠然と川を眺めさせるのではなく、田んぼに水を引くための小川の中を覗いたり、河原を隅々まで歩き回ったり、水の中をじっと眺めさせたり結果、息子さんは自然に棲む動物の生態を詳しく知ることができました。

 子どもは、知れば知るほど「もっと詳しく知りたい!」という欲求を募らせるものです。そうした知識欲を満足させてやるべく、おとうさんは詳しい図鑑を八方捜しては手に入れ、息子さんに与えたそうです。こうした野外での体験的学習が、息子さんの学ぶ力を大いに引き出していったことは想像に難くありません。

 連想ゲームのように頭に浮かんだことですが、ノーベル物理学賞を受賞したアメリカのリチャード・ファインマン博士は、子どもの頃おとうさんにしばしば博物館へ連れて行ってもらったそうです。

 おとうさんは余り成功したとは言い難い起業家だったそうですが、恐竜の化石を前に、熱心にわが子に恐竜について語って聞かせてくれたそうです。ただし、おとうさんの説明は子どもにもだいぶ間違いがあったとわかるものだったようです。しかし、そういう実物にふれる体験が、後にノーベル賞を受賞するほどの偉大な科学者を育てたのかもしれません。

 教育的視点に立つと、「こうやれば、ああなる」といった図式で子どもに接するのは好ましくないように思います。ただ、先ほどの自然観察を息子さんにさせたおとうさんにしろ、偉大な科学者を育てたおとうさんにしろ、わが子に接しているときには具体的効果を目当てにはしておられなかったと思います。あったとしたら、「子どもにこういう体験をさせてやりたい」「子どもにこういうことを教えてやりたい」という情熱と愛情ではないでしょうか。

 夏休みは、普段より親子で一緒にいられる時間がたくさんあります。ここは、おとうさんの出番かも知れませんね。

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