私学へ入ってからのことが心配ですか?
7月 26th, 2010
このところ、毎日のように筆者は私学を訪問しています。弊社の私学紹介イベントが無事に終わり、協力していただいた私学にお礼の挨拶回りをするためです。
そのとき、ふと「せっかく私学を訪ね、私学の先生とお話しできるのだから、受験生の親御さんに参考になる話を聞いて帰り、それをブログに載せたらどうだろうか」ということが頭をよぎりました。
いささか思いつきでしたが、どうせなら知りたいけれど少し聞き難い質問をしてみようと、「私学に入ったものの、うまく行かない生徒さんはいますか」「うまく行かなくなるのはいつ頃が多いですか」「学業面で苦労している生徒さんに、何か具体的対策をしておられますか」「補習はされていますか。されているとしたら、何年生ですか」などといったことを尋ねてみました。
それに対して、私学の先生がたは丁寧に答えてくださいました。先生がたのお話をお聞きしていて、「質問してよかった」とつくづく思いました。とかく受験する側の発想は「受かるにはどうしたらよいか」に偏りがちです。しかし、“受験後”を見据えた受験勉強をすることも大切です。受かったあとの子どもの様子を聞いてご紹介することで、どういう受験をすべきかをこのブログの読者の方々に考えていただきたいと思いました。
まず筆者が驚いたのは、質問をした全ての私学で補習をされていることでした。さすがに中1からされているケースは稀でしたが、中2や中3ではほとんど全ての私学で補習が行われていました。それも指名して受けさせる補習、任意に希望者を対象として行われる補習など様々でした。なかには、朝の授業前に補習をされている私学もありました。お話を聞いていて、「私学の先生って大変なんだな」とつくづく思った次第です。
昔はこんなに補習はしておられなかったと思います。入学後の学力格差が以前よりも広がりつつあるのでしょうか。ただ、以前よりも保護者からの要望が多く(強く)なったということは、私学の先生に聞くまでもなく、あちらこちらから漏れ伝えられていることです。
私学は、同じ学力規準をクリアして入学した生徒さんの集団です。それなのに、中学2年生頃から補習を受ける生徒さんがどの学校にも一定数いるとは! これはどういうことなのでしょうか。まず思うのは、「私学の多くは中2までで中学校課程の勉強を終える。そのはやいテンポに着いていけなくなったのだろう」「中学課程の基礎が不十分な生徒さんは、高校課程の学習が始まった中3から全く勉強がわからなくなるのではないか」ということです。
このことは、概ね当たっているように思います。しかし、そればかりではありませんでした。学習習慣がついていなかったり、思春期の問題がからんで勉強がおろそかになったり、クラブに傾倒しすぎたり、中学受験の反動でしばらく勉強に熱が入らなかったりなど、様々な原因があるようでした。
ある私学の先生が言われていましたが、知識を口元に流し込んでもらうような受動的勉強をしていると、受かっても必ず行き詰まってしまうそうです。そういう生徒さんの保護者からフォローを望まれ、基礎を定着させるための補習を先生がたがさせられるとしたら、本末転倒と言うしかありません。私学は、志をもって、自ら学ぶ精鋭の生徒集団であるはずですから。
中学へ入ってから勉強がうまく行かなくなる原因として、先ほど挙げた「学習習慣がついていない」というのがあるのも残念なことです。これも考えられる原因は、大人主導の受け身の受験勉強のせいだと思います。あるいは、中途半端な受験勉強で受かった生徒さんがこうなる可能性も高いと思います。
思春期になると、多くの生徒さんは大人に反発するとともに、既成のものを否定し、自分らしさを主張したりするようになります。勉強以外のものに傾倒したり、羽目を外しすぎたりすることもあります。クラブ活動に傾倒しすぎるというのも、これと関連がありそうですね。
大人から見ると危なっかしいのですが、ある私学の先生は、「そういう経験を通じて、自分ならではの世界をもつこと、自分の引き出しを多くもつことも重要だ」と述べておられました。そういう経験をした生徒さんのほうが、自分の生き方をもっているし、いざやる気になったときにエネルギーを集中させて夢を実現させる可能性が高いそうです。これは程度問題ではありますが、親としてはハラハラさせられますね。
そういえば、中学受験で大人に勉強を強要されたり、親に厳しく叱られながら勉強したりしていた子どもは、思春期になったときが危ないと言われています。小学生時代までは、大人との力関係では圧倒的に大人の方が上です。そこで、子どもが納得いかないことも我慢させられます。しかしながら、心の奥底には大人への不信感や反発があります。それが思春期になって爆発し、周囲の大人の言うことを聞かなくなったり、親を否定したり、勉強を投げ出したりといった行動に子どもを走らせることになります。
どうでしょう。どういう受験勉強によって入試を突破すべきかについて、多少なりとも参考になったでしょうか。いざわが子が受験となると、どういう勉強で合格すべきかを考えるよりも、どうしたら合格できるかばかりを考えがちです。しかし、大切なわが子が受かったあとに埋没しては受験の意味はありません。やはり、どういう受験で合格すべきかを考えることは大切なことだと思います。