子どもの学習意欲は何によって高まるの? ~その3~

9月 21st, 2010

 引き続き、子どもの学習意欲を支える要素の年齢による変化についての感想を書いていきます。

学習意欲の相対的強さの変化、新井邦二郎、1995

 前回の記事でも掲載しました上記の資料でおわかりいただけるように、学習意欲のもととして、児童期の6年間で最も安定した活躍をしてくれるのは興味的理由(内発的動機)です。「知りたい!」「解き明かしたい!」という欲求に駆られた子どもは、それこそ無我夢中になって考えます。好奇心は人間の性(さが)とも言えるものです。そういう純粋な動機だからでしょうか。教育心理学の世界では、この内発的動機を背景とした学習が昔から最も望ましいものとされてきました。

 ただし、この「興味的理由」は子どもを取り巻く環境によって左右されます。特に、親に見守られ、親に認められる環境を得てこそ子どもの心は安定し、周囲のものごとに関心を向けるようになります。心理学の本に、「承認欲求」とありますが、この欲求が満たされてこそ子どもの好奇心は発揮されるのだと言えるでしょう。

 ところで、「興味的理由」は、中学生になると次第に学習意欲を支える力を失っていきます。これはどういうことなのでしょう。年齢を重ねるにしたがって、人間の物事への興味・関心は減退してしまうのでしょうか? そうではありません。成長とともに、好奇心や関心が他の要素と絡み合い、別の形で発揮されるようになるのだと考えられています。

 たとえば、ある学者は「興味的理由」は「自己目標の達成をめざすことで生まれる学習意欲」と融合するのだという見解を示しています。その学者は、「内発的動機が社会化されるのだ」というようなことを述べていました。知ることそのものを追求する姿勢が、自己実現への欲求へと昇華していくのかも知れません。

 最後に、まだ取り上げていない学習意欲を支える4つの目の要素について。その4つめの要素とは、「規範意識に基づく学習意欲」ですが、この言葉では実際のイメージが湧きにくいですね。「親や周囲の大人の期待に応えようとすることから生まれてくる学習意欲」だとご理解ください。

 親の期待に応えようとすることからわきあがる学習意欲は、小学校6年間を通してみると、一番高い水準で推移しています。しかも、中~高学年の4年間では常にトップの座に着いています。このことから、親がわが子にどう接するべきかのヒントが見えてくるのではないでしょうか。

 子どもが小学校中学年にさしかかってきたら、「ほめること」と「親の期待を伝えること」とを上手に使い分け、子どものやる気をバックアップしてやることが大切です。それは、子どもに「親に期待されている」「親に愛されている」という安心感を与えたり、自己有能感をもたせたりすることにもなり、ものごとへの興味・関心を引き出すことにもなると思います。

 こうしてみると、小学校の中学年(3~4年生)というのは、子どもの学習意欲を喚起するのによい時期であり、また、それによって勉強好きにできる可能性が高い時期だと言えるのではないでしょうか。賞罰がまだ高い効力を発揮する最後の時期にあたり、親の期待に応えようという気持ちが最も強い時期であり、知りたいという欲求がそのまま学習意欲につながる時期なのです。

 子どものすることに関心を示してやり、積極的に行動することを大いに喜んでやり、失敗したときには大いに残念がってやり、頑張ったときには結果に関わらずほめてやり・・・・・・。勉強の結果としての成績や順位には、まだまだこだわるべきではありません。結果を怖れる気持ち、自分の能力に疑念をもつ気持ちを子どもにもたせないことです。おおらかに、好奇心を存分に発揮する子どもに育てていただきたいものです。

Posted in アドバイス, 勉強の仕方, 子どもの発達, 子育てについて, 家庭での教育

おすすめの記事