中学受験生の学習意欲と親の関わり ~その2~
10月 4th, 2010
ここ何回か、学習意欲を支える4つの要素について書いてきました。今回は、その「まとめ」をしてみたいと思います。具体的には、「子どもの学習意欲を支える4つの要素」が中学入試突破に向けて望ましい役割を果たしていくために、親はどんな配慮をすべきかについて、筆者なりの見解を書いたものです。お子さんの成長につながるサポートのありかたについて、少しでも参考にしていただけるなら幸いです。
1.規範意識に基づく学習意欲
(親の期待に応えようという気持ち)
この要素は、小学校3年生から6年生にかけて、子どもの学習意欲を支える中心的な役割を果たします。「親の期待に応えよう」という子どもだからこその気持ちを、どう学習の取り組みにつなげていくかは、親の責任とも少なからずリンクしており、学習成果があがるかどうかの大変重要なポイントとなります。
しかし、だからこそ、この要素には「子どもの望ましい成長」という視点が重要ではないでしょうか。成績がいちばんの期待なのか、日々の努力こそが親の期待なのか。がんばりを引き出す効果は同じでも、子どもの心に宿るものは随分違ってきます。親のこの働きかけは、入試の結果に関わらず子どもの人間形成に少なからぬ影響を与えることでしょう。
2.興味的理由に基づく学習意欲(内発的動機)
「知りたい」「解き明かしたい」という人間本来の欲求に基づく学習意欲は純粋であり、生涯大切に携えておきたいものです。この要素は人間として成熟するなかで「社会的欲求」とつながり、人生の目標達成のための意欲へと発展していきます。
しかし、中学受験の段階で「何が何でも合格」といった学習を大人が強制すると、この純粋な欲求はしぼんでしまいます。小学生の受験勉強は、「どうしても解き明かしたい」→「習ったことをもとに自分で考える」→「自分で解いたからうれしい」といった、子どものもつ探求心を満足させることを基本におくべきだと思います。その意味で、とても大切にされるべき学習意欲の要素だと言えるでしょう。
3.賞罰に基づく学習意欲
「賞罰によって子どもをがんばらせるのはよくない」と、決めつける必要はありません。子どもは誰だって親にほめられたいのです。問題なのは、結果が出たときだけほめることではないでしょうか。また、叱ることだって必要なことです。しかし、これもまた「結果が出なかったなら、がんばったかどうかに関わらず叱る」というのでは筋が通りません。
努力を期待として差し出し(前述)、がんばったら結果を問わず子どもをほめてやる。これが大切だと思います。また、褒美にものを与える場合でも、愛情を背景としているものなら副作用はありません。弊社の保護者の方々も上手に使っておられます。たとえば、塾で帰りが遅くなる日には、お手製のジュースで報いてやる。成績が上がったら、翌週の週末の夕食には子どもの大好きなメニューを添えてやる。これらは、おかあさんだからこそ提供できるすばらしいインセンティブです。
4.目標の実現をめざす気持ちを背景とした学習意欲
「うちの子は、受験生だという自覚がない」「目標をめざすという意識が足りない」という悩みが、家庭からしばしば寄せられます。しかし、まだ将来を見据えて目標を定めることができない小学生なら当然のことです。ですが、受験してほしい私学に連れて行ってみる、社会にはどんな仕事があるかを話して聞かせるなど、あきらめずに辛抱強く子どもに情報を投げかけることが大切です。
子どもは日々確実に成長しています。親の働きかけが無意味なように思えても、あきらめるべきではありません。この年齢の子どもは、親からの情報をいちばん頼りにし、吸収しているものです。子どもが一定の成長を遂げたなら、いつか親の働きかけが子どもの姿勢や行動に反映されるときがきます。たとえその時期が6年生の秋深くであっても、子どものラスト・スパートの原動力となるのは間違いありません。
学習意欲を支えるいくつかの要素は、年齢とともにそのもつ影響力を変えていきます。しかし、どれが重要で、どれが重要でないかという視点に立つのは、意味がないことです。どれも重要なのです。それぞれのもつ意味をよく理解し、どれもが効力を発揮するよう配慮してやることが、大人の務めであろうと思います。そうすれば、自然と子どもは年齢に応じた要因を背景にがんばり出すのです。
無償の愛という言葉がありますが、親から子どもに向けられる愛情ほど、これに当てはまるものはありません。すぐに効果はなくても、親の愛情に満ちた働きかけは子どもにしっかりと伝わっているものです。入試の結果に必ず反映されるとは限りませんが、受験までのプロセスで親の愛情をたっぷりと確かめたお子さんが、人生を踏み外すことは絶対にありません。