ゆっくりよく噛むと頭によいという話

9月 20th, 2011

 最近、街で歩きながらものを食べる若い人をよく見かけます。ジーンズ姿など、カジュアルな服装の若者が多いのですが、中にはスーツにネクタイ姿のビジネスマンや、かなりしっかりとした服装の女性(会社勤めのOL?)も見かけます。どうやら食べる様子や時間から言って、間食の類ではなさそうで、食事代わりにそうしているようです。

 近年は共働きの家庭が多く、仕事に応じてそれぞれ生活サイクルが違い、夫婦や親子揃っての食事が難しくなっているのでしょうか。一人住まいの若い人は、朝自分で朝食をつくって食べる習慣をもたなくなったのでしょうか。一人で食べることを孤食などと言うそうですが、どうなのでしょう。この言葉に、なんだか悲しげな響きを感じてしまいます。以前このブログにも書きましたが、これは日本だけでなく世界共通の現象のようです。

 筆者などは意識も生活習慣も古いタイプの人間です。三食必ずとり、早寝早起きが欠かせません。いくらファーストフードとは言え、歩きながら食べるなどということは到底できません。第一、そんな食事はおいしくとも何ともありません。

 先日見かけたサラリーマン姿の若い男性など、鞄を肘ではさみ、片手にハンバーガー、もう片方の手に飲み物をもち、交互に食べたり飲んだりしながら歩いていました。実に器用だと感心しつつも、「そんなにも忙しいのか」と首を傾げてしまいました。

 ところで、歩きながら食べることができるのは、そういった食べかたも想定したファーストフードが普及しているからでしょう。手に油が付くことなく食べられるよう工夫もなされています。また、あっという間に食事を終えることができます。急いでいるときには実に便利ですね。こういう食事には堅いものがなく、口に放り込めばろくに噛まなくても喉を通過していきます。

 ただし、こういった食事は子どもにはよくありません。塩分や糖分の摂りすぎにつながり、栄養バランスがよくありません。この話は、おかあさんがたには釈迦に説法ですから、これぐらいにしておきます。

 ここで本題に入りましょう。おたくでは、お子さんはゆっくりと食事の時間をとり、よく噛んで食べておられるでしょうか。脳科学の専門家によると、そのことは脳の発達にとってとても重要なことだそうです。

 基本は、口にしたものを二十回くらい噛むことです。おおよそそれぐらいの回数ということですが、子どもが小学生のうちにぜひとも習慣化しておきたいものです。以後の話は、みな前出の脳科学者の書いておられることの受け売りですが、成長途上にある小学生のお子さんをおもちのかたは、わが子を健康で優秀な人間に育てるためにも、是非参考にしていただきたいと思います。

 食べ物をしっかりと噛めば、脳の運動野が活性化します。そして、同時にものごとに取り組むうえでのやる気や積極性に深く関わる知性の中枢、前頭連合野を活性化します。これはネズミの実験ですが、同じ餌を固形で一定期間食べさせるのと、粉末にして試させるのと二通り試し、後で知能検査が行われました。すると、固形の餌を食べさせたネズミのほうがよい成績を得たそうです。

 食べ物をよく噛めば、味覚、視覚、嗅覚、体性感覚(外に出ている目や耳などとは異なる、皮膚や体内深部の感覚)などに関わる脳領域が刺激され、五感が研ぎ澄まされてくるのです。また、しっかりと噛めば記憶に関わる海馬を刺激する、コレシストキニンと呼ばれるホルモンが分泌され、記憶や学習の能力が強化されます。

 お子さんの毎日の食事の実際について振り返ってみてください。たいていの子どもは、ファーストフードの店が大好きで、弁当が必要なときにもお金をもってそういうところへお目当てのものを買いにいく子もかなりいます。また、堅い食べ物自体を嫌う子もたくさんいます。おたくではどうでしょうか。

 肉や魚、野菜類などをバランスよく摂り、しっかりと噛む食事をさせてやりましょう。

 なお、頭の栄養素であるブドウ糖は、食事後12時間までしかもちません。朝食を抜くと、夕食後つぎの日の給食までエネルギー補給がなされないことになり、勉強にも支障を来してしまいます。毎日三食を必ず励行したいものです。

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