中学受験後に子どもを待っている世界
10月 17th, 2011
中学受験を経て私立や国立の中学校に進学した子どもが、経験しがちなカルチャーショックがあります。「あれ、今までと違う。どうしたらいいんだろう」と、子どもが戸惑うことがあります。それは、なんでしょう。どういうことでしょうか。
中学受験までの勉強は、多くの場合塾任せ、大人任せです。小学生ですから、まだ何をどうやったらよいのか自分で判断できませんから、しかたありません。
「ああしなさい、こうしなさい」「いついつまでに、ここをやっておきなさい」「○ページから○ページまで覚えてきなさい」「ここは、こうやって解くんだ・・・・・・」
こんな調子で塾の先生に指導され、とにかくそれについて行くことが子どもにとっての勉強であることが多いものです。そうなると、おそらくほとんどの子どもは中学校に入ってから戸惑うことでしょう。なぜなら、私立にせよ、国立にせよ、子どもが受験して入った中学校では、いずれも「自主性ある人間」であることを前提にして教育が行われるからです。
これはある意味で当たり前のことです。学校は学力をつけるためにのみあるのではありません。社会に出てから自立した人間として活動し、あらゆる環境の中で自分というものを見失うことなく主体性をもって生きていける人間としての土台を築く場です。集団の中で自分を位置づけ、通用させる努力をしていく場所です。一人ひとり手取り足取り面倒を見てもらえるはずがありません。
ですから、子どもは中学校に入った途端、そこがこれまでのやりかたや考えかたを180度転換させないとやっていけない世界であることに気づかされます。もともと家庭教育が自主性を重んじるものであれば、子どもも「中学校というところは、何でも自分で考えて行動するところなんだ」と理解し、いち早くこの新しい環境に適応していけるでしょう。どの子どももそうであれば問題なく、中学校でやっていけるはずです。
ところが、現実はどうもそういうわけにはいかないようです。勿論、いち早く適応し、学校の先生の期待するような行動をとれる子どももいます。しかし、受験生時代に受験勉強中心の生活を送っていた子どもは、自分でやるべきことは何かを考え、自発的に行動するような姿勢を育てていません。
それどころか、宿題やレポートなどの提出を要請されても、期限までにどのようにやり遂げるべきかを自分で考えて準備することができず、提出が滞るケースもあるようです。
小学生の場合、受験の何たるかをろくに知らない段階から受験生活に入ることが多いものです。そこで、親も塾も子どもの受験勉強や受験生活の様々な面を先回りし、場合によっては強引なくらい引っ張ってやる必要がないではありません。
しかし、そのさじ加減こそ、大人が最も注意しなければならないことです。子どもの自立学習を掲げる弊社ですが、「自分でやりなさい」と言いさえすれば子どもが自分でやるなら苦労はありません。弊社にわが子を通わせたなら、大概のおとうさんおかあさんはすぐに気づかれることでしょう。子ども任せではなく、子どもが自ら勉強を管理し取り組むようにさせることが、いかに大変なことかを。
ここでは、弊社が子どもの自立学習をどう支援しているかについては書きません。また、通ってくださるお子さんのすべてに、自立勉強の姿勢を築くことをめざしていますが、それがどれほど難しいことであるかも承知しています。
大事なことは、おとうさんおかあさんも、指導にあたる学習塾も、子どもがやがて足を踏み入れていく世界がどのようなものかをしっかりと理解し、それをわきまえた応援をすることではないでしょうか。受験生活を何の問題もなしに乗り切る子どもはいません。いや、むしろいろいろ挫折感を味わったり、壁に突き当たったりしながら、子どもは様々なこと学びとっていきます。ですから、「受験勉強や受験生活を通じて、いかにして子どもを自立した人間に近づけていくかを、子どもを見守る大人の共通の認識にすべきだと思います。
そのプロセスにおいて、勉強の習慣をつけておくことや、自分で考えながら勉強を組み立てること、要領よくてきぱきとやるべき勉強を片づけていくことを、子どもに少しでも学ばせることが必要なのではないでしょうか。
中学入試までに、自立に向けた到達点は子どもによって様々だと思います。しかし、自立に向けた流れを築いておけば、中学校で戸惑ったり、自信を失ったりすることはありません。受験を視野に入れておられるご家庭には、今のわが子の勉強ぶりを見て、そういう流れが少しずつできつつあるかどうかをチェックしてみてください。