“努力”は、頭の中でどう活かされる!?

12月 26th, 2011

 何か新しい発見をしたり、今までにわからなかったことがわかったりしたとき、子どもはうれしそうな顔をし、歓喜の声をあげたりします。その光景はとてもほほえましいですね。

 もしも、こうした体験が子どもの知的な能力の向上、もしくは脳の発達に深い関わりをもっていたとしたら、さらにうれしくなってしまいます。みなさんはどうでしょうか? 今回は、そのことを話題にしてみようと思います。

 みなさんはシナプスという言葉をよく耳にされると思います。ご存知かと思いますが、シナプスとは神経細胞間にあるミクロン単位の狭い隙間のことです。ここで分泌される化学物質の量によって脳の働きが良くなったり悪くなったりします。シナプスには可塑性を備えたものがあり、脳の海馬というところで発見されていますが、記憶力の強弱と深い関係をもつと言われています。

   可塑性とは、いったん形をつくると元に戻らない性質のことをいいます。何かのきっかけによってシナプスで分泌される化学物質の量が増え、それまで十分活用されていなかったシナプス回路が活性化して情報伝達の機能が強化されたとします。すると、この状態が長期にわたって継続され、高い水準の記憶力を維持するのです。これを長期増強(LTP)といい、現在の脳科学界では、記憶や学習の基本的メカニズムであろうと認識されつつあります。

 また、長期間にわたる学習の積み重ねは、新しいシナプスの芽を育てます。これは発芽と呼ばれ、シナプス回路の情報伝達力の強化につながります。記憶が格納されている側頭葉などでみられる現象です。

 では、具体的にはどうすることが「何かのきっかけ」になり、脳の働きをよくするのでしょう。また、どのような学習がシナプスの発芽を促すのでしょうか。もしもそれがわかったなら、ぜひわが子の家庭教育に役立てたいものですよね。脳科学に詳しい先生の本に、つぎのような記述がありました。

「……刺激の伝達を速く、また、脳の働きをよくするには、『努力』という心的エネルギーが必要である。つまり、頭をよくするということは決して楽なことではなく精神的苦労をしなければならない。ところが、脳は苦労を苦労と思わないで『楽しい』という思いにこれを切り替えることができる……」

 この記述は、私たちに有用なヒントを与えてくれます。確かに勉強するのは楽なことではありません。しかし、子どもは誰でもみな勉強を嫌がるかというと、そうではありません。私たちの学習塾に通っている子どもの中にも、かなりの数のがんばりやさんがいます。

 そういう子どもの努力を引き出しているのは、「勉強しろ!」という押しつけではありません(ストレスでホルモン分泌が押さえられ、記憶を妨げる)。

 子どもががんばるにはいろいろ理由があります。その中で最も大きいのは、親が愛情深く「勉強はいかに大切なものか」を上手に理解させているからではないかと思います。子どもは、放っておいては努力しないかも知れませんが、私たち大人の関わり方次第で、苦労を自ら買って学ぶようにできるのです。先程の長期増強という脳内現象も、子ども自らの積極的努力によってこそもたらされるのは言うまでもありません。

 そこで親が心がけたいのは、子どもの努力やがんばりを常に関心をもって見届け、励ましたりほめたりしてやることです。また、ときどきは親子団欒のときを設け、楽しい話に花を咲かせるとともに、親からいろいろな面白い情報を提供してやるのもよいでしょう。

 子どもの勉強に向かう姿勢が能動的になってくると、次第に「今わかりたいのだから」というこだわりが生まれてきます。段々と粘り強く考えるようになり、「あっ、わかった!」といううれしそうな声をあげるようになります。それを耳にしたなら、大いに喜んでやりましょう。

 「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、それは子どもを追い込んで難しい勉強に追い立てることではないと思います。それよりも、まずはわが子に学ぶことの価値に気づかせることが重要ではないでしょうか。こうした体験が「やる気」の源になり、「努力」という頭に効く薬を自らつくり出します。

 大人の役割として重要なのは、勉強の中身を教えるよりも勉強の価値を教えることです。勉強を苦労と思わない子どもにするのは大変ですが、毎年数多くのご家庭が見事に実践されていることをお伝えしておきます。

 私たちは学習塾として、こうした子育ての延長線上に中学受験を位置づけ、子どもたちの学力開花を応援しています。

 

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