自分に自信をもてない日本の子どもたち

2月 20th, 2012

 自分に自信があると、行動も積極的になり、うまくいくことが多いものです。また、自信をもつことが心豊かな生活にもつながります。ですから、親は「わが子には、自分に対する自信をもった人間に成長してほしい」と思います。

ところが、日本の子どもは自分に対する評価が他国の子どもと比べて低いという国際比較調査の結果が出ています。自らに自信がもてない子どもは、今述べたのとは反対に、何ごとにも消極的になりがちであり、社会に出てよい仕事をする人間にはなれません。

少し自信が足りないといった程度なら、「日本は謙譲の美徳を重んじる国だから、子どもも控えめに答えるのだろう」と、笑ってすまされるのでしょう。しかしながら、次の資料を見るとそれではすまされないように思えてきます。

 

小学生の自己評価  「とても当てはまる」と解答した者の割合

 

東京

ソウル

北京

ミルウォーキー

オークランド

サンパウロ

勉強のできる子

8.4

8.6

14.0

43.5

27.6

37.4

友だちから人気のある子

9.8

11.2

31.6

35.4

28.9

32.0

正直な子

12.0

27.4

39.3

49.8

47.6

54.4

親切な子

12.3

26.4

41.0

59.1

46.6

50.6

よく働く子

14.3

31.7

39.8

67.1

38.3

48.5

勇気のある子

19.0

28.0

37.5

57.8

39.6

48.3

平均

12.6

22.2

33.9

52.2

38.1

45.2

※各国約3002000人の小学5年生を対象に調査。H7ベネッセ教育研究所による。

 

 この資料は新しいものではありません。しかし、最近行われているPISAなどの国際学力比較調査で、日本の子どもの学習意欲の低いことが問題視されています。このことと自分に対する自信のなさとは無関係ではないでしょう。したがって、状況は好転していないと推測されます。

このブログは学習塾から発信しています。そこで、保護者の方々の関心事の一つである、「勉強」に関わる項目に着目してみましょう。何と、「勉強ができる子」と答えた子どもの割合が一番低いのは東京で、わずか8.4%でした。この質問ではアジアが全体的に低いのが特徴です。東アジアの都市域は、世界的にも受験圧力の強い地域であり、それが「自分は勉強ができる」という意識を失わせているのではないか、という専門家の指摘がありました。

 他の項目もおしなべて、日本の子どもの数値が低いのが気になります。生活に困窮する経験もなく、親の庇護のもとで何不自由なく暮らしているというのに、なぜ日本の子どもは自分に自信がもてないのでしょうか。

 ある教育学者は、このことと因果関係があるのではないかという見方から、次のような資料を提示しておられます。

 

子どもの成長についての満足度   「満足」と答えた人の割合(%)

 

日本

韓国

タイ

アメリカ

イギリス

スウェーデン

0~3歳

68.7

78.7

68.5

93.1

92.7

94.4

4~6歳

53.7

61.1

67.0

88.5

89.1

89.2

7~9歳

47.3

57.8

69.4

82.8

78.1

84.6

1012

36.3

52.9

74.1

84.5

83.3

82.7

※いずれの国も、約1000名の母親を対象に調査。H5文部省調査。

 

 これは、「子どもの成長に満足していますか」という質問への回答結果をまとめたものです。選択肢は、「満足」「やや満足」「不満」の三つで、表中の数字は、「満足」と答えた人の割合を示します。

 日本のおかあさんは、わが子が赤ん坊の段階で、すでに7割弱しかわが子の成長に「満足」しておられません。なぜわが国ではこうした傾向が見られるのでしょうか。これをご覧になったおかあさんには、ぜひこのような結果が出た原因について、考えてみていただきたいと思います。

  次に、子どもが小学校高学年になったときの数値を比べてみましょう。日本のおかあさんは36%あまりしか「満足」と思っていないようです。これは他国と比べて図抜けて低い数値です。欧米諸国との差は50%近くもあります。こうした現実について、前述の学者の見解をご紹介しましょう。

 本来なら、子どもが大きくなるにしたがって「うちの子はしっかりしてきたな」となって満足感が回復してくるべきだと思うが、日本は逆に満足度は下がってしまう。日本の親はどうも子どもへの期待が高すぎるのか、期待の方向が子どもの実際の成長の方向と少しずれているのだろうか。いずれにせよ、親が自分の子どもに満足していないことは態度となって、どうしても子どもの前に出てくる。そういう子どもへの感情は、親子の信頼関係をつくりにくくしてしまうのではないか。

  この指摘は、これからお子さんの中学受験生活に入るご家庭にとって大いに参考になると思います。親が胸に留めるべきは、こういうことではないでしょうか。

 わが子への期待は大いに伝えるべきである。しかし、期待が過度なものだと、子どもに自信を失わせるおそれがある。わが子に対しては、適度な期待を継続的に伝えてやることが必要である。

  子どもに対して絶対的な立場にある親の対応は、子どもの人格形成に大きな影響を及ぼします。親の期待を差し出すことは重要ですが、期待通りにならないときの対応も同じくらい重要です。がんばりの足りないわが子に不満を示すだけでは、子どもをがんばらせることにはなりません。子どもを励まし、粘り強く見守り、そして子どもの成長を待ってやる余裕をもちたいものです。

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