授業で習得してほしい知識とは
4月 9th, 2012
進学塾はその名の通り、進学のために通うところです。つまり、入学試験に合格できる学力をつけるためにお子さんは通っておられるわけですが、では、そこで行われる授業でお子さんは何を学んでいるのでしょうか。
答えは様々かも知れませんが、突き詰めると、試験問題に対応できる「知識・技能を学んでいる」ということになるでしょう。特に、「知識の習得」という要素は、どなたも認識されていることであろうと思います。
ただし、入試で求められる知識をすべて学習塾で伝授するとなると、毎日おびただしいほどの時間を使って学んでいただく必要があります。ですから、学習塾で全てをまかなうのは不可能です。
これは、毎日通学のある学校ですら同じであり、家庭勉強の重要性を伝え、宿題をかなりの量出しているのはそのためです。
ここからは、私たちの学習塾の話になります。弊社の教室は、基本的に週3日の通学としています。授業時間は1教科45分。たったこれだけで入試に対応する知識を伝授することなどできません。また、「残りは家で覚えておきなさい」などという指導では、子どもは塾でも家でもひたすら暗記や練習を繰り返すことになってしまいます。
実は、知識というものには二つの要素があるのです。
一つは、「それぞれの教科の学習対象の要素となる個別の知識」です。
もう一つは、「何らかの理屈を身につけるための規則や方法に関する知識」です。つまり、「学習活動を支える知識」と言ったらよいでしょうか。
多くのかたは、前者のような知識を連想されたのではないかと思います。しかしながら、後者のような知識も大変重要なものです。私たちの教室で実施する授業は、後者の知識を子どもたちに伝授することを主眼としています。
単体の知識を覚えるために授業時間を使っても、あまり意味はありません。授業を繰り返すなかで、知識の活用法をしっかりと子どもたちが身につけていけば、先々もっと高い学問領域に進んでからも困りません。自ら知識を修めていくための知的枠組みを備えているからです。
残念なことですが、中学受験においてはいまだに知識を詰め込むスタイルの受験対策が行われているケースもあるようです。これでは身につけた知識を活用する能力は磨かれませんし、頭のよい人間にはなれません。中学、高校、大学へと進むにつれ、学力は伸び悩んでしまうでしょう。
近年、PISAテスト(OECDが実施する国際学力比較調査)で日本の子どもが今ひとつ振るわないことが問題視されています。その一方、フィンランドやカナダ、オーストラリアなど、日本よりも好成績を挙げている国の教育が注目されています。無論、日本のほうが優れている面もあるでしょう。しかしながら、これらの国で注目に値するのは、「日本よりも授業時数が少なく、教える知識量も少ない。教科書もページ数が少ない」ということです。このことが示唆することをよく考えてみる必要がありそうです。
こうした結果を受け、日本でも「学習は量ではなく質が大切だ」という認識が広まりつつあるようです。ゆとり教育の反動として提唱されている「確かな学力路線」は、時間や物量主義の古典的学力観に若干立ち戻りつつあると警鐘を鳴らす学者も少なくありません。
学んで獲得した知識は、単なる個別の知識として終わってしまうのではなく、さらなる知識の獲得や、思考・表現の手段として活用されてこそ意味をもつ。――これは、ある学習心理学者の言葉です。筆者は詳しく知りませんが、PISAテストで好成績をあげている前述の国々では、こうした考えかたと同じような観点に立った指導が教育現場で実践されているのかも知れません。
お子さんが使っておられるテキストに、一度目を通してみてください。いずれも「学習の要点」で単元の基本的理屈を勉強します。そこでは、単元を構成する重要知識とそれが果たしている役割を学びます。それから練習問題・発展問題などへの取り組みを通じて、個別の知識の意味やその活用法に関する知識を定着させ、深めていく仕組みになっています。
お子さんが授業を終えて帰られたとき、ときどきは「今日はどんなことを勉強したの?」と尋ねてあげてください。授業の流れに沿った説明を少しでもお子さんがされるようでしたら、授業を聞いて知識を獲得するだけでなく、その活用法についても学んでおられるのは間違いありません。