受験のプロセスで“段取り力”を磨く

3月 4th, 2013

 中学受験が終わり、いよいよ進学先を決める段階に至ったとき、「この学校に進学して、ついていけるでしょうか」という質問をよくいただきます。

 さて、どう答えたものでしょうか。「高いレベルの勉強についていけるか」「優秀な他のお子さんがたについていけるか」といった心配があるのでしょう。

 ズバリ言えば、受かったのですから何も心配する必要はありません。「上位の得点で受からなければ、あとで苦労する」と言う人がときどきおられますが、そういうことはありません。

  入試は4教科で行われます。学校の先生がたが練りに練って出題された問題に対して、一定レベルの解答が導き出せたのですから、能力に疑いをもつ必要などありません。

   だいいち、弊社の会員は2週間に1回の割合でミニ模試をしているようなものです。回ごとにめまぐるしく順位が変わるのをご存知のことと思います。大概のお子さんはよい順位をとる回もあれば、思わぬ失敗をする回もあります。トータルで考えれば、個々の能力にそう大きな隔たりなどありません。

   これらのことからも、中学校に入ってから学力形成でつまずくのは、能力面によるものではないと断言できます。私学の先生などに伺っても、「入学試験での得点順位と、入学後の成績とは相関関係はない」とおしゃっています。

 では、何が生徒個々の中学進学後の伸びようを決定しているのでしょうか。なかには中学進学後、伸び悩むお子さんもいるようです。何が原因なのでしょうか。以前このブログで「宿題をためてしまうお子さんは苦労している」というようなことを書いたことがあります。また、受験が終わって「これでゲームがいくらでもできる」と、ゲーム三昧の生活を送ったために、ついていけなくなるお子さんの例を、私学の先生から伺ったことがあり、それをご紹介したこともあります。

  これらの例から「学習習慣」の重要性が見えてくるでしょう。学習習慣のよいところは、勉強に向かうときの億劫な気持ちと闘う必要がなくなり、勉強すると決めた時間になったら、おのずと体が勝手に動くかのように机に向かうようになる点にあります。誰でもそうですが、勉強というと腰が重くなるのですね。それを解消してくれるのが「習慣」なのです。

   「学習習慣」に付随して、もう一つ学力形成において非常に重要な要素があります。それは、「段取り力」です。段取り力とは、たとえば「今日やるべきことは何か」を整理整頓し、「やるべきことのなかでいちばん重要なもの、次の重要なもの、その次に・・・」というように優先順位をつけることのできる能力です。さらには時間的制約などがあるときには、「どこまでやっておくべきか」の判断をする能力などもこれに含まれるでしょう。

 この段取り力をつけるうえで、弊社の学習システムは非常に便利です。ほぼ1日おきに塾で授業があり、授業の翌日は家庭で勉強するような仕組みになっています。5・6年部は2月23日に開講しましたが、子どもたちにとって当面の課題は、2週間に1回の割合で実施されるマナビーテストに照準を合わせながら、計画的に学ぶ習慣、段取りをつけて学ぶ姿勢を少しずつ磨いていくことです。

   たとえば、授業前の予習(4年生には課していません)、授業後の復習、2週間に1回の割合で実施されるマナビーテストに備えたまとめ学習、補助教材(週ごとにやるところが指定されており、そこからマナビーテストにも一定数出題される)の学習などを、計画に基づきながら、いつ、どれだけやっておくかをそのときそのときの事情に合わせて判断して学んでいくことになります。そのプロセスにおいて、ただテストでよい成績をとれるようになるだけではなく、しっかりとした学習の習慣や、段取りをつけながら学ぶ姿勢を身につければ、これが中学後も続く長い学習生活において、大いに効力を発揮するようになります。

   中学・高校の6年間で、学ぶことがらや内容は大変高度なものになっていきます。この大きな変化のプロセスを順調に乗り越えていくためには、ただ能力に恵まれているだけではダメで、努力の積み重ねが利く学びの態勢を築いておく必要があります。それが、学習習慣や段取り力です。

  段取り力に関連して思い出したことがあります。ある書物に、人間がやることを、「重要で差し迫った事柄」「重要だが差し迫っていない事柄」「重要でないが、差し迫った事柄」「重要でなく、差し迫ってもいない事柄」という4つに分類し、どれに比重がおかれているかで、その人物の生きかたがわかるといった内容のことが書かれていました。

  この点を自分に照らしてみると、なかなか耳の痛い話になります。多くの人間は、「重要で、差し迫った事柄」に気を取られているのではないでしょうか。もっといけないのは、「重要でなく、差し迫った事柄」に振り回されたり、「重要でなく、差し迫ってもいない事柄」に時間を費やしたりすることです。しかしながら、とかくそういったことに時間をとられてしまうのが多くの人間の現実です。

  実は、「重要だが、差し迫っていない事柄」こそ、人間がいちばん心を砕き、心血を注いで取り組むべきことなのですね。それに気づき、先を見据えた努力をすることこそ、大いなる成長を遂げるための秘訣なのです。

  子どもたちの受験勉強で言うと、「目の前のマナビーテスト」に備えた勉強が、「重要で、差し迫った事柄」にあたるかもしれません。では、「重要だが、差し迫っていない事柄」は何でしょうか。それが、学習の習慣づけであったり、段取り力を身につけたりすることなのではないでしょうか。また、あるいは苦手教科、苦手単元の克服のための学習もこれに含まれるかもしれません。

 テストでよい成績をあげたいのは誰しも同じで、大概の子どもはそこにエネルギーを投じています。しかし、よい成績をあげるための深謀遠慮をめぐらせた学びの必要性をわれわれ大人が認識し、子どもたちの学習にうまく組み入れてやることも大切だと思います。

  保護者の方々にはこの点をご理解いただき、先々の伸びしろのある子どもになるよう見守りと応援をお願いいたします。指導にあたる私たちも、将来の飛躍を見通した学習指導をしっかりと押し進めてまいりたいと存じます。

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