しつけの仕上げ期に必要な親の働きかけ ~その2~
7月 15th, 2013
前回は、親から子どもへの働きかけの実態に関する国際比較調査についてご紹介したところで終わりました。そこで、今回は調査結果をまとめた資料をご紹介し、そこから読み取れることについてお伝えしてみようと思います。
資料の左側から見てみましょう。「口出しする」は、子どもから見て、親が自分のことについて何かと口出しをしてくるかどうかを調べたものです。グラフの数字は「そうである」と「かなりそうである」を合わせたものですが、日本の親は総じてアメリカやトルコの親と比べて口出しが少ないようです。特に父親はその傾向が顕著です。他国の父親は「口出しする」が50~60%であるのに対し、日本の父親はわずか24%あまりに過ぎず、口出しがきわめて少ないことがわかりました。
前回も少しふれましたが、子どものことに親が関心をもち、親の気持ちや考えを子どもに伝えることは、しつけの年齢期には必要なことだと思います。子どもに反抗されたり、親子喧嘩の引き金になったりすることもあるでしょうが、そうならないように冷静に話をしながら親の思いを伝えることもしつけとして重要なことです。それを日本の親、特におとうさんは面倒に思って避けているのでしょうか。
ただし、子どものことについての口出しは、いずれの国もおとうさんよりもおかあさんのほうが多い傾向にあるようです。日常の生活で接することの多いおかあさんが、しつけ面でも関わりが深いのはどの国も同じなのでしょう。
つぎの「私に相談する」ですが、この項目は日本の親が突出して少ないことがわかりました。資料のデータを見てください。子どもに相談する日本のおとうさんは、3%に満たない数しかいません。おかあさんも20%未満で、8割前後もいるアメリカのおとうさんおかあさんとは比べるべくもありません。
おそらく、「子どもに相談する」という形をとって子どもに考えさせ、子どもに「自分が決めたことだから頑張ろう!」という意欲や、「決めたことはやりきる」という実行力を引き出すのがねらいであろうと思います。このような方法は、欧米の親に顕著に見られるものなのでしょうか。同じアジアに属するトルコのおとうさんやおかあさんの数値が低いのも、それを裏づけているように思います。
しかし、それにしても日本の親には問題がありそうです。相談するという形をとらずとも、別の形で子どもとの接触を図ったり、子どもの意志決定を引き出したりしておられるならまだしも、他の2項目の数値も合わせて想像すると、そうではないように思われてなりません。
夏休みがまもなくやってきますが、夏休みの計画を立てるにあたっては、親から「夏休みの計画だけど、どうしたらよいと思う?」などと相談をもちかけるスタイルで子どもに考えさせるのもよいでしょう。ぜひ、おとうさんに試してみていただきたいですね。
三つ目の「我慢を教える」ですが、アメリカとトルコの子どもの8割前後が「そうである」もしくは「かなりそうである」と答えています。しかも、父母ともほぼ同じ数値を示しています。日本はどうかというと、やはり他国よりは低い数値を示しています。ただし、おとうさんはわが子に我慢を教えるという点では、他の2項目よりは関与しておられるようです。
以上からわかった日本の親の特徴は、わが子にあまり口出しをしない、子どもに相談をもちかけることをほとんどしない、他国の親ほど我慢を教えていないということです。「口出しする」「相談する」「我慢を教える」は、いずれも子どもの自立に向けた成長を後押しするうえで必要な関わりです。その意味において、日本の親はわが子の自立支援に努力していないということが言えそうです。前述の「若者の逸脱」と、この調査結果は無関係ではないのではないでしょうか。
なお、「子どもに相談する」は、日本の子育て習慣になじまない方法かもしれませんが、そうであったとしてもあまりにも数値が低いように思います。父親の実権が強いトルコですら、約3割のおとうさんがこの方法を採っています。相談という形で子どもに自己決定を促すことの意義を踏まえるなら、同じアプローチのしかたでなくても、何らかの形で同種の効果を意図した方法を実行に移して欲しいものですね。
このブログは、主として小学校の中~高学年の保護者を念頭に置いて書いています。もし、この年齢のお子さんをおもちでしたら、今回の調査結果を参考にし、もっともっとお子さんのことに関心をもち、親としての働きかけをしていただきたいですね。
しつけの糸をはずすべき段階は、やがてどのご家庭にもやってきます。私立や国立の中学校進学をめざし、今受験勉強に取り組んでいるお子さんも、この点に関しては全く同じです。自分で学ぶ姿勢を培い、自律へ向けて成長を遂げながら志望校への進学の夢を叶えて欲しいものです。それが、とりもなおさず実り多い中学・高校生活を実現するうえでの絶対的な条件になるのですから。
おとうさんおかあさんにおかれては、まだまだ辛抱強い見守りと関わりを余儀なくされることでしょうが、わが子を親の力や関わりでよりよい方向に変えられるのは今のうちです。ぜひがんばってください。
※資料は、中里至正・松井洋氏の著作より引用しました。