仮想面談で考える子どもの“やる気”問題
4月 14th, 2014
以上は、「子どもにやる気がない」という問題を扱った、面談シミュレーションを書いたものです(こんなに冷静な面談担当者はいないかもしれませんが)。ある本をヒントに考えたのですが、これに似たような相談は相当数にのぼります。また、このブログの検索キーワードで図抜けて多いのが「やる気」であり、「わが子にもっとやる気を!」と願っておられるかたと、一緒にこの問題を考えてみようと思い立ちました。
結論を先に言うと、お子さんにやる気がないのではありません。ある本に、「わが子が何度言ってもやろうとしない。やる気がないと嘆くなら、自分の子どもの頃を思い出すべきだ。自分は、親に2~3度注意されただけで態度を改めただろうか」という記述がありました。
親が子どものことを黙って見ていられず、次々と矢継ぎ早に注意と叱責の言葉をまくし立てる。それが繰り返されると、やがて子どもは親の真意を受け止めようとする姿勢を放棄し、親の望みとは裏腹なことばかりするようになりがちです。
親がまずもって念頭に置くべきは、「自分だって、子どもの頃親の注意や小言にうんざりしたものだ。親の心配やイライラを口にすると逆効果を招くだけだ」という認識です。そして、同じ接しかたをいつまでも繰り返さないことです。まずは、「勉強はイヤだ」「もっと遊びたい」と子どもが思うのは普通のことなのだを受け止め、そのうえで子どもが望ましい行動の選択をするよう働きかけるべきではないでしょうか。
このような流れを築くための第一歩。それは、毎日の家庭の会話から改善することだと思います。たいていの親は、子どもの望ましくない状態を目の当たりにすると、子どもをコントロールしようという衝動に駆られます。それはたちまち子どもに伝わり、親の期待とは逆の行動へと走らせてしまいます。
「親の話は注意と小言ばかり」--子どもがそう思ってしまうと、どんな働きかけも功を奏しません。まずは、親子の会話の時間を小言や叱責、強制とは無縁の楽しいものにし、親の愛情を伝えるためのひとときにすべきではないでしょうか。親への尊敬や信頼の気持ちなしに、子どもは親の言うとおりにしようとは思わないものです。
こうした楽しい会話を基本としたうえで留意したいのは、学校の宿題や塾の勉強など、子どもにやってほしいことに関しては、「どうしたらいいと思う?」「いつやったらいいと思う?」など、子どもに行動の選択をさせるように話しかけることです。親の考えを初めから言うと、「押しつけられている」と子どもは察知してしまいます。何ごとにつけ、子どもが自分で行動の選択をするよう働きかけることから、自発的な行動姿勢の芽は育つのだと言われます。
子どもも、勉強の大切さについては十分理解しています。ただし、「遊びたい」という子どもの気持ちを受け止めてやることも必要でしょう。また、人間の常として、遊んでから勉強というのは成り立り難いものです。逆に、「勉強したら、そのあとは自由な時間がある」なら、子どもは勉強を受け入れるでしょう。
「どうしたらいいと思う?」という働きかけのなかに、そういう選択肢を設けるのも効果があるかもしれません。子どもも小学校の中学年ぐらいになると、押しつけを極端に嫌うようになることがあります。親からの一方的押しつけにならないよう配慮し、子どもが自分で判断し、遊ぶことと勉強することのけじめをつけるように導くことが重要だと思います。
やがて入試が近づいてくると、ほとんどの子どもは真剣に受験のことを考えるようになります。そういう日が来るのが少し遅いか早いかで、入試の結果が明暗を分けることも少なくありません。
親としては気を揉むところですが、焦ってしまうと悪循環を招くだけです。日常会話を通して親子関係を少しずつ改善し、子どもの意志を尊重するような投げかけを心がけ、自発的に勉強に取り組むような流れができるよう導くのです。そのほうが、結果として親の思いを押しつけるよりもはるかに子どもはやるべきことを自分で考えて行動するようになるものです。受験のサポートは、相手が小学生だけにまさに子育ての一側面であり、“忍耐”なしにはできないことです。
なお、やる気に関してはこれまでもいろいろ書いてきました。親子関係、親の性格、お子さんの性格、家庭のライフスタイル、親のしつけに対する考えかたや姿勢など、効果のある方法を決定づける要素は様々にあり、どの家庭にも効果のある方法というものは見つからないものです。
子どもが親の期待に沿った行動を選択するための前提条件は、親の愛情がしっかりと子どもに伝わること。そこを間違えないようにしたうえで、お子さんのやる気と奮起を促す方法を辛抱強く見つけ出していただきたいと存じます。